1982年6月14日、東京地方梅雨入り。一日中細かい雨が降り続き、肌寒い。
武道館では、前日の夜からコンサートの準備が始められていた。この日も
長い一日が明日のためにつぎ込まれる。夜9時を過ぎてようやく、スタッフが
何人かずつ帰路につく。外には2、30人の少女達が様子を伺うかのように集
まっていた。明くる6月15日オフコース武道館10日間公演初日は爽やかな
快晴になった。最終チェックが済み、準備の調った会場には、ビートルズ・
ナンバーが流れ始める。それと同時に2か所の入り口---1階西正面口と
2階南西口---の大きな大硝子戸が軋めきながら開かれ、人並が勢いよく
武道館の内部に流れ込んでいく。

武道館での日々は、瞬く間に過ぎていった。新聞、雑誌はこぞってコンサートの
様子を解散への序曲と報じる。一日、一日、惜しむようにコンサートが続く。

6月30日、朝から雲が空をおおう。しかし夕方には、薄い雲を透して、淡い夕焼けが
辺りを包んでいた。会場前のステージではメンバー・スタッフらが勢揃いして記念
撮影をする。シャンペンで乾杯。やがて、1時間58分の時の流れは、オフコースの
ひとつの形に終わりをもたらした…

(合掌)