彼と主人公は、会社の先輩と後輩の関係だった。

彼は、優しくて面倒見が良く、そんな彼を主人公は慕い、何かと
相談に乗ってもらったりしているうちに、彼を愛するように
なった。

彼は、愛していた女性に振られた直後で、交際相手は
いなかった。

彼は、主人公に好意を持っていたが、愛するという程の気持ち
まではなかった。

彼は、新しい相手を見つけて、振られた彼女を忘れたかった
ため、主人公と付き合うことにした。

主人公は、本格的な恋愛は初めてで、彼も愛してくれていると
思っていた。

彼と元カノのよりが戻った気配を感じた頃、彼がしばらく転勤に
なることになった。

彼をなじったり、喧嘩になったりで、連絡が途絶えていった。

月日が経ち、主人公も後輩の面倒を見るようになり、相談を
受けたりして、彼の立場上のこととか、失恋の痛みも知った。

主人公は、彼のこと、失恋の痛みを忘れるために、誠実そうで
条件の良い相手との結婚を選び、退職した。

彼が元カノと結婚したことなどは、耳に入った。

彼は、転勤先から戻った。
見覚えのあるレインコートや足どりで、彼であることが
分かったが、既に二年の時が経過している。
まなざしや髪型は、幸せかどうかというような踏み込んだ
描写ではなく、時の経過について、数字だけでなく、
視覚的・映像的に表現したものととる。

うつむく彼の横顔は疲れているように見えるが、彼を癒せるのが
自分ではないことは分かっているので、とても愛していた彼への
気持ちが込み上げた。

彼が優しく接してくれたことや、失恋の痛手を癒したい気持ち
なども分かるようになった。
本当に愛するということからすると、愛していたのは
私のほうだけだった、ということも分かってしまった。

過去のことにしていたのに、思いのほか心にこたえた。

彼が去り、雨もやみかけ、ありふれた夜に戻っても
主人公の心は残る。