一方近藤との仲を深めていくなかで、明菜は徐々に周囲の者との間に距離をつくっていく。

「急にソワソワと落ち着かなくなったんです」

 そう話すのはワーナー・パイオニア(当時)の制作ディレクターだった島田雄三だ。

「あれほどレコーディングが好きだった明菜が、さっさと仕事を切り上げようとする
あるいは、それまで何でも話してくれた明菜の口数が少なくなった。小さな秘密を
抱えたかのように、どこかよそよそしくなってきたのです」

 明菜の視界に入っていたのは近藤だけだった。
近藤のために、近藤に見てもらうために明菜は歌った。
だが、若くて青い恋愛は、脆さと背中合わせだ。
ましてや世間を知らずにスターとなった二人は、暗雲を切り抜ける術を持たなかった。