「タフィコ?」
「ノーノー、タ・カ・ヒ・コ」
「タバスコ?」
「ノー…」
佐藤隆彦は悩んでいた。単身渡米し1Aの入団テストに受かったはいいが、
どうもアメリカ人には自分の名前が上手く発音できないらしい。
(いっそ登録名を変えてみようか…。しかしいいのが思いつかないしな…)
そんな折、事件は起こった。

ガ ツ ッ !!

「ぐあっ!」
「No!」

その日3安打1HRと大当たりだった佐藤が、頭部に死球を食らったのだ。
「Sato!」
「Are you okay!?(大丈夫か!?)」
「Fuck you!」
倒れこむ佐藤。激昂して飛び出してくるチームメイト。球場に不穏な空気が漂う。
しかしその時、佐藤はよろよろと起き上がるとピッチャーに笑顔を見せた。
「There is nothing to it.I was just a bad player.(大した事ないよ。オレが下手なだけさ)」
そう言うと佐藤は何事もなかったかのように一塁に歩いた。
するとまばらな客席から、パチパチと拍手が響いた。
「Good guy!」
「Good guy,Sato!」

その後、その試合は「Good.Guy.Sato」として地元のちょっとした語り草になる。
佐藤隆彦の登録名が「G.G.佐藤」になったのはそれからである。

嘘のような本当の作り話。