『魔術師 三原脩と西鉄ライオンズ』(立石泰則 著 文藝春秋)

「例えば、三原は盗塁を阻止するためには、すべてが投手のモーションのスピードいかん
 にかかっている事を『科学的』に説明してみせた。
 走者が一塁から二塁までの走塁にかかる時間は、リードしてスタートを切ってから四秒。
 それに対して、投手がモーションを起こしてから、打者に投げたボールを捕球して、
 捕手が走者をさすために二塁に送球するまでの時間は四秒か四秒一。
 だから、その時間差がある限り、投手が普通の投球をしていたら、
 すべての盗塁はセーフになってしまうと三原は指摘するのである。
 では、どうしたら、盗塁を阻止できるか。
 投手は走者が塁に出るとクイックモーションで投球し、
 捕手はいかに二塁にストライクを投げるかが肝要、と説くのだ。

 そのような三原の教示に感嘆させられた投手のひとりに、エース格の野口正明がいた。
 『驚きました。目から鱗が落ちる気持ちがしたものです。
  その当時、ランナーのファーストからセカンドまでの走塁にかかる時間と、
  ピッチャーからキャッチャーへ投球し、それがセカンドまでに送球されるまでの時間差、
  両者の時間差で盗塁阻止を、そういう風に説明された監督さんはいませんもの。
  素晴らしい監督さんだと思いました。』 」
--------------------------------------------------------------------------------------

『私とプロ野球』野村克也著

「私は阪急とのプレーオフが始まる1か月前から南海の投手陣に福本封じの特訓を課した。
 それは今でいうクイックモーションだった。」
「当時は画期的というか前例のない試みだった。」
「だが、こんなプレーは日本はもちろんメジャーリーグでも試みている例はなかった。」


三原 西鉄監督時代 1951〜1959年

野村南海監督 対阪急プレーオフ 1973年