「集大成」

「がんばろうKOBE」を合言葉に優勝したオリックスは、95年のハイライトだった。イチローを先頭とした選手たちが仰木マジックで踊り、球宴を待たぬ
うちから独走を始め、そのままゴールテープを切った戦いぶりは被災者に勇気を与えた。そんなシーズンで、2位に躍進したロッテからもオリックスに
負けず強い印象を受けたのは、率いたボビー・バレンタインが仰木に引けを取らない“マジック”で魅せた個性派監督だという事と、前年まで8年連続
5位以下での9年連続Bクラスというチーム状態だったというギャップに他ならない。
10年ぶりAクラス入りしたロッテの“集大成”と言える試合が、9月15日から17日にかけて行われた神戸での対オリックス3連戦3連勝だった。
両チームとも12日から6連戦。オリックスは、地元神戸で12・13日と近鉄に連勝、14日は敗れたもののマジックを1としていた。一方ロッテは12日
から千葉でのダイエー3連戦に全勝、3戦で24得点3失点の完勝で神戸に乗り込んでいた。オリックスが一つでも勝てば悲願の地元Vという空気も
あって、3試合で11万5千人の観衆を集めた。

第1戦は、球場の緊張感がそのままオリックスナインに伝わった。伊良部秀輝が八回まで被安打3、13奪三振の快投で相手先発・野田浩司に
投げ勝つ無失点。9月から右投手専用で先発に入る事が多かった林博康の一発による1点を、マウンドを引き継いだ成本年秀と河本育之が守った。
第2戦は元々オリックスに「嫌な打線ではなかった」とのイメージを持っていた小宮山悟が、八回途中まで高橋智の一発だけの1失点に抑えて
長谷川滋利との技巧派対決を制し3−1と連勝した。
第3戦は序盤に失った3点のビハインドを、終盤見事に引っくり返した。四回またも林の一発が出て反撃の狼煙を上げると、八回に好投の佐藤義則
から代わった平井正史から初芝清の同点打と南渕時高の走者一掃で5点を奪った。

オリックスは地元Vを逃し、対ロッテも12勝13敗1分けとカード負け越しが決定。この3連戦でロッテは大きな爪跡を残したが、監督の進退問題に
ついて広岡達朗GMら球団の考えを改める材料にはならずバレンタインは解任された。以後低迷を続け95年の象徴ともいえる集大成の3連勝は、
さほど影響は無かったかに思えたが、一時の輝きを忘れられない球団が8年後のオフにバレンタインを呼び戻し、05年に日本一に上り詰めた事を
考えれば、95年の戦いも決して徒労には終わらなかったということか。 (了)