>>396
つづき

付録 C 環付空間
層とか圏について知っている人に対してちょっと補足しておきます。先に多様体を環付空間と見倣すと言い
ましたが、本当は各点の stalk が局所環である環付空間、即ち局所環付空間と見倣す方がよいです。というの
は、圏として見るとき、関手
Spec : (1 を持つ可換環の圏) → (環付空間の圏) (付録 C.1)
は fully faithful ではないのですが、
Spec : (1 を持つ可換環の圏) → (局所環付空間の圏) (付録 C.2)

はちゃんと fully faithful になってくれるからです。(局所環付空間の射は各 stalk の準同型が局所環の準同型
になっているものと定める。) 同じように、1 <= r <= ∞ として、
(Cr-多様体の圏) → (局所環付空間の圏);
M → (M の位相空間, Cr-関数の層)
なども、fully faithful な関手です。局所環付空間が多様体の自然な拡張になっていることが納得出来ると思います。

慣習上、参考文献を挙げておきます。
・ 可換環論については
[1] H. Matsumura, Commutative Algebra (Benjamin)
がお薦めです。(神田の古本屋によく新品同様のが置いてある。) 日本語では次のものがあります。
[2] 永田雅宜, 可換環論 (紀伊国屋書店)
・ 代数幾何については、やはり EGA, つまり
[3] Gothendieck Dieudonn´e, Elements de g´eom´etrique alg´ebrique, (IHES)
を挙げねばならないのですが、いきなり読むのは大変です。
[4] Hartshorn, Algebraic Geometry, (Springer GTM)
[5] Mumford, Introduction to Algebraic Geometry
などが読みやすいでしょう。初学者には [5] あたりがお薦めです。
・ 層やホモロジー代数については
[6] 河田敬義, ホモロジー代数 I, II, (岩波基礎数学)
や、その巻末にある参考文献を見るとよいです。
[7] 竹内外史, 層, 圏, トポス, (日本評論社)
は、予備知識が少なくてかつ面白いと思います。
・ 整数論については山程本があるので挙げませんが、
[8] 岩澤健吉, 代数関数論, (岩波書店)
は一度は読んでおくべきでしょう。
(引用終り)
以上