https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56623500Q0A310C2000000/
クモの糸が導く繊維革命 企業価値すでに1000億円超
SDGs起業家たち(6)
SDGs起業家たち スタートアップ 環境エネ・素材
2020/3/8 2:05 (2020/3/16 1:00更新)
(抜粋)
山形県鶴岡市。田畑の広がる自然豊かな地域で、持続可能な未来につながる新素材の開発に取り組む起業家がいる。Spiber(スパイバー)の関山和秀(37)だ。クモの糸をヒントに、化学繊維の誕生以来の繊維革命をめざす。

進むべき道が見えてきたのが高校3年の春。慶応大環境情報学部教授の冨田勝との出会いだ。大学進学の説明会で冨田がITとバイオを融合したテクノロジーについて熱く語るのを聞き、「これだ!」と感じた。説明会後にカバン持ちを申し出て駅まで冨田に付いていったほどだ。

■「ゴミじゃないか」

「絶対に冨田研に入りたい」。成績の悪かった関山は猛勉強して慶大環境情報学部に進学。念願の冨田研究室に入り、慶大の先端生命科学研究所で研究を始めた。転機が訪れたのは大学4年の時。「クモの糸ってすごいらしいよ」。研究室の合宿で仲間と飲みながら出た一言だった。

翌朝、大学に戻ってクモに関する文献を取り寄せた。この頑丈で伸縮性の高い糸から、すごい繊維がつくれるんじゃないか――。こんな思いがわき上がってきた。

繊維にするには大量の糸が必要になるが、クモ自体を量産するのは難しい。それで微生物の発酵によって人工たんぱく質を生み、培養して糸の原料を増やす手法を選んだ。道筋は見えたものの、なかなか前に進まなかった。ようやく修士過程の修了間近にほんの数ミリグラムの「繊維のようなもの」ができたが、ほとんどの先生に「ゴミじゃないか」とまで言われた。

つづく