>>321 追加

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リーマン予想 : 大栗博司のブログ
2009年 11月 18日
(抜粋)
先日NHKでリーマン予想についての特別番組があり、それについてこのブログのコメント欄に、「素粒子論との関係を取り上げていましたが、本当に関係があるのでしょうか」との質問がありました。

丁寧に作られたよい番組だったと思います。

さて、ご質問の「素粒子論との関係」ですが、リーマンのゼータ函数のゼロ点の分布と、ある種の行列模型の固有値の分布との関係のことを指しているようです。

原子核のような複雑な多体系のエネルギー準位を計算するのに、基本原理から求めることをあきらめて、あまりに複雑だからランダムに分布したエルミート作用素を原子核のハミルトニアンの模型として考えようという試みが、今から半世紀ぐらい前になされました。
理論物理学者のフリーマン・ダイソンさんは、特にガウス分布をするユニタリー行列を考えて、行列のサイズが無限大になる極限で、固有値の分布の相関を計算しました。

一方で、数学者のヒュー・モントゴメリーさんは、リーマン予想に動機付けられて、リーマンのゼータ函数のゼロ点の分布の相関について予想をたてました。
そして、この相関が、たまたまダイソンさんの計算したランダム行列の相関と一致した。NHKの番組では、この2つの相関の一致のことを「素粒子論との関係」と呼んでいたのです。

ダイソンさんの模型自身が原子核を極端に簡単化したものなので、これをもってしてリーマン予想が究極の素粒子理論の鍵を握るというのは大げさすぎるかなと思いました。
ただし、ゼータ函数のゼロ点の分布のような整数論の基本的な問題と、物理学の問題から現れたランダム行列模型が関係しているということ自身は面白いことなので、それをできるだけ分かりやすく伝えようとする番組の努力は立派です。

ルイ・ド・ブランジェさんの「証明」を中心にすえた番組構成でしたが、もうすこし整数論の主流の研究者の意見を聴きたかったです。
たとえば、番組の最初にドン・ザギエさんが一瞬だけ登場しますが、彼はド・ブランジェさんの証明やモントゴメリーさんの予想についてはどう考えているのでしょうか。
(引用終り)