>>504 つづき

定義5. 数直線R の第一類部分集合のことを疎集合(meager set) といい, その全体をM であらわす. □

こうして, ルベーグ測度の零集合のクラスN の類似物として疎集合のクラスM が導入されました. これ
にともなって, ルベーグ可測性の類似物として導入されるのが, ベールの性質です.

定義6. 実数の集合A に対して, A△B ∈ M をみたすボレル集合が存在するとき, A はベールの性質 (property of Baire) を持つという. □

ここでのB としては開集合をとることができます. ベールの性質を持つ集合のクラスはルベーグ可測集合
のクラスと多くの性質を共有しています. 直積測度にかんするFubini の定理に対してKuratowski とUlamの定理, というように, 測度論のいろいろな定理に対してその“カテゴリー版” が存在します.
ルベーグ可測でない集合が存在するのと同様に, ベールの性質を持たない集合も存在します. 実際, Vitali の
ルベーグ不可測集合はベールの性質を持ちません. また, 選択公理を用いれば, ルベーグ可測だがベールの性質
を持たない集合, ルベーグ不可測だがベールの性質を持つ集合などの存在を容易に証明できます. そこで, 実数
のどんな集合がベールの性質を持つか, また, ベールの性質を持たない集合を具体的・明示的に定義できるか,
というのは自然な問いといえます*7. Solovay の二つの定理の(c) と(c’) はこのことを問題にするものです.
次の補題は, 第3 節でランダム実数とコーエン実数の性質を対比する際に役に立ちます. (証明が明示的・構成的である点に, よく注意してください.)

補題5. 数直線R を二つの互いに交わらない集合A とB に分割して, A が零集合B が疎集合となるように
できる.
[証明]

*7 ただし, 測度の問題の(A) と(B) に対応するものは, ベールの性質については考えられません.
(引用終り)

つづく