伊理正夫さんは偉い学者なのでしょうか?


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現在我が国では(海外でも)「行列」,「行列式」,「線形代数」,等の言葉を本の表題
あるいは一部の章の表題に含む本は数え切れないほどある.そこに新たに一つを
付け加えることにどれだけの意味があるか,疑問に思われる方も少なくないかも
しれない.しかし,私には,現存のそれらの本はどれも大同小異にみえる。
やや暴言をお許し頂ければ,怠惰な学生と広範囲の応用の経験に乏しいのに
応用系の学生を教えなければならない教師とに阿(おもね)るかのごとくに書かれた
“分かりやすくて通り一遍の”教科書か,著者が“自分がどこまで抽象的にしかも
厳密に理解しているかをひけらかす”ような数学者のための数学専門書かの
どちらかで,数学の利用者,消費者をほとんど無視したものばかりのようである.
私は,長年多くの応用分野で線形代数に関連した方法を利用し,また不足している
ところは必要に応じて自前で補ったりしながら数理工学的な研究を続けてきたもので
あるが,現在遍在している上記のような本の著者達とは思い切って立場を変えて,
利用者の観点からおよそ何かの役に立ちそうなものを体系的に整理して一冊の本に
纏めてみるのも無駄ではなかろうと常々考えていた.
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