「ヘンペルのカラス」は「全てのカラスは黒い」という命題を証明する以下のような対偶論法を指す。

全称命題「全てのカラスは黒い」という命題はその対偶「黒くないものはカラスでない」と同値であるので、「全てのカラスは黒い」という命題を証明するには「全ての黒くないものはカラスでない」ことを証明すれば良い。
そして「全ての黒くないものはカラスでない」という命題は、世界中の黒くないものを順に調べ、それらの中に一つもカラスがないことをチェックすれば証明することができる。
こうして、カラスを一羽も調べること無く、「カラスは黒い」という命題が、事実に合致するか否かを証明できるのである。
これは日常的な感覚からすれば奇妙にも見える。

こうした、一見素朴な直観に反する論法の存在を示したのが「ヘンペルのカラス」である。