国内的少子化で「産めよ増やせよ」空気が先進諸国で再び高まっているが、
この風潮に警笛を鳴らす声もある。

家庭と稼業を分離させ生計を市場の競争に委ねる傾向が高い資本主義経済では
個人が経済的に自立するハードルがどんどん高まる傾向にあり、
産んで育てた子供が将来経済的に自立して生活できるかどうか不透明であり、
そのことに失敗するリスクもまたますます高まっているというのだ。
若者の失業率やNEET率は短期的な景気回復で一時的に低下したとしても
長期的な見通しは明るくないという。
また殺人事件の多くが家庭内で起こっていることを無視できない。

しかもAI化やロボット化で今後の雇用市場の競争はさらに厳しくなるという。
世間並みの教育投資が家計に占める負担は増える一方であり、
教育投資をしたからといってその子が将来的に得られる実質所得の期待値は
今後停滞するか下がっていく可能性が極めて高い。
この時代状況下にあって安易に子供を作ることは個人の人生設計において
かえって高いリスクと高い不確定要素を背負うことになるというのだ。

また少子化は、こうした時代状況に対して労働者家計が唯一抵抗できる
救いの要素だという面もある。安定した雇用率が逓減すると同時に少子化が
進むことで労働者は失業するリスクを辛うじて回避できるかもしれないからだ。

家庭を持つということは自分以外の家族の人生のリスクを背負うことでもあり、
世間の風潮に流されて安易に選択する道ではないかもしれない。