「竹の歌」

僕は幼い頃に両親に捨てられ、色んな所を転々として生きて来た...
親せきをたらい回しにされた挙句、最後には児童養護施設に預けられた。

施設の子とか、いつも同じ服を着た乞食とか、色んな事言われました。
たまに同級生の子と遊んでいても「〇〇君の家に行こう!」とかなって、僕が遊びに行くと、
そこの家のお母さんが「〇〇君と遊んでは、いけないって、あれほど言ったでしょ!」と、

連れて来た我が子を叱る声が聞こえ、僕を汚いものを見るような眼で「〇〇は、
今日は遊べないの…」と言われることは日常茶飯事でした。僕は弱い人間なので、
そんなことが重なるうちに独りでいる事が一番傷つかず、一番楽なのだと
いつの間にか思うようになっていた.........

けど、僕にも、言いたいことは一杯あった。汚い服、同じ服着ていても、僕は人のものを盗んだり、
傷つけたり、悪いことは何もしていない。両親はいないけど、僕にはどうすることも出来ないんだ!
僕だってお父さん、お母さんが欲しいんだよ! 僕は、なるべく人と接しないように生きて来た。
自分の精神、心を守る為にそうせざるを得なかった......

...誰にも迷惑を掛けずに生きていく... 高校に進学した時のことだった...
朝学校に行くと、僕の机には「死ね」「乞食」「貧乏神」「親無し」等… あらゆる悪口が書かれてあった。
僕は目の前が暗くなった。僕が何かしたのか?! 僕は何か・・・ ただ立ち尽くすだけだった...

…その時、僕の目の前から机が無くなった… クラスで人気者で大人びたY君が、僕の机を抱え上げていた。
僕は、机で殴られるのかと思い目を閉じた。「行くぞ!」とY君はぶっきらぼうに言い放つと廊下に出て行く…
僕は後に従った。Y君は技術室に行くと、紙やすりで僕の机の落書きを一生懸命に消し始めた…

Y君は、ただ一言だけ「こんなつまらんことしやがって… あいつらに負けるなよ!」と言いながら、
黙々と紙やすりで落書きを消している。「放課後、もう一回、ここてニス塗ろうぜ! そしたら元通りだ!」と、
言ってニッコリ笑って見せた。僕は泣いて頷いた。Y君は照れ笑いをして「俺も小学生の頃はいじめにあっていた。

理不尽で不条理なことが多いけど、負けるな! くじけるな! 強く生きろ! そのために生まれて来たんだぞ!
この世界で何を学び、どんな生き方をして来たかだ… 地下に根を張る竹林のようにな… 小学生の頃、
いじめにあって泣いて帰って来た俺を見たオヤジに怒鳴られた。どんなことがあっても負けない強い心を持て!

 そんな心の成長が最も大切なんだ! これからは…」
                ...そして己に厳しく、どれだけ人に優しくなれるかだと思う......