俺の親父は片田舎の公務員だった
毎晩遅く赤い顔してかえってくるのが常だった
俺は顔を合わせるのも嫌で、親父が帰ってくると自分の部屋に閉じこもってた
公務員にだけはなるまいと思ってた

親父は退職してすぐに胃癌で死んじまった
痛みを我慢していたらしかった
とうとう我慢できなくなり、病院にいったときにはもう癌はこぶし大になってた

議会の事務方トップまで出世したが、遺産と呼べるようなものは一切残さなかった
あとからわかったことだが、毎晩のように同僚や部下を引き連れ飲み歩いてたらしかった

火葬のときには火葬場に人が入りきれないほどの人、人、人
みんな泣いてた

俺は親父が死んじまっても涙はでなかった
でも親父を慕ってくれてたひとたちを見て、はじめて泣いたんだ

ごめんな親父、ほんとにごめん