外国旅行をしている最中で邦人クレープ屋と話し込んでいて、
ふと貴重品や荷物を放置していたことを思い出し、あわてて確認してみると
封筒に入れていた札束がすべてニセ札にすり替えられていた。
そのニセ札は一応日本円を真似たものなのだが、画用紙に刷られており
実に粗悪なペン画で、ラテン顔の夏目漱石と樋口一葉が印象的だった。
四色あったが全て千円札だった。
それをみてむしろ笑っていると、秘密警察らしい謎の英国人が覗き込んでくるので
手近にあった建物のトイレに逃げ込み、のぞき窓から見ると、
尾けてきていて、トイレの前をうろうろしていた。

そのニセ札の柄をまだ憶えている。