兄は、もはや思い出してもつまらないことと、心の中にしまった事細かなことまでおぼえていた。
気にしていた言葉や思い出が、兄の口から出た。


もういいよとしか言えなかった。
兄はあの日私が黙って泣いていたのを、感傷にひたって泣いたか、母親が忘れ去っていることに傷ついたかとでも思っているかもしれない。

兄よ、そんなことはどうでもいいんだ。
ぶつかってばかりで本当に仲の悪かった兄がちゃんと知っていてくれたこと、
人が自分のために本気で怒ってくれることのありがたさに、涙が止まらなかったんだ。

その時私は、これで本当に終わりにしようと思った。
ずっと追い出せなかった心の中の暗いもの全部。

君は荒れて若くして家を出て、どんなに大変だったであろう。さびしかっただろう。
何も力になれていなかった、本当にごめん。

君は私を守ると言ったけど、私が君を守るよ。
こんな気持ちは初めてだ。
生まれてきてくれてありがとう。
本当にありがとう。

私の双子の兄へ