「何をする。バカヤロー」

 午前7時に独房で目を覚ました麻原は朝食をきれいに平らげた後で突然、刑務官に出房を促され、運命を悟ったのか思わず「チクショー」という叫び声を上げた。
刑務官に両腕を抱えられ、うす暗い廊下を歩いて、執行前に僧侶らの説諭を受ける教晦(きょうかい)室に入る。

 「松本智津夫君。残念ですが、法務大臣から刑の執行命令が来ました。お別れです」

 拘置所長がそう伝えた途端、麻原の身体が激しく震え出した。彼は教誨を受けず、遺言も残さなかったが、遺骨の引取先としてすでに教団から離脱した四女を指定したという。

 《麻原は午前8時過ぎ、抵抗することなく執行された》と報じられたが、実は激しく動揺し、「何をする。バカヤロー」と泣き叫び、刑務官が後ろから羽交い絞めにしてやっと目隠しをし、
後ろ手に手錠をかけ、4人がかりで死刑台の上に立たせてロープを首に巻き付けた。

 執行直前、麻原はブルブルッと身体を震わせて手足を力いっぱい突っ張り、ゴクッと生つばをのみ込んだという。

 麻原の遺体は3日後に火葬された。が、その遺骨の引取先をめぐって今、一時対立していた麻原の妻と三女が協力し、法務大臣に引き渡しを要求するなど騒動に発展している。