岸田総理の「六重苦論」はフェイクだ 古賀茂明
政官財の罪と罰
https://dot.asahi.com/wa/2021102200074.html

「六重苦」の中身を具体的に見ると、実は自民党にとっては、不都合なことばかりである。

その第一は、「円高」だ。
確かに、民主党政権の時代はかなりの円高だった。
アベノミクスは、異次元の金融緩和とバラマキ財政出動で円安を実現したのだが、
実は、これは本来はカンフル剤でしかない。
円安は、日本の賃金を国際的に安くする「低賃金政策」でもある。
これに頼った経団連企業の経営者は企業努力を怠り、生産性向上に失敗した。
その結果、日本の労働者の実質賃金は減少を続けたのだ。
最近では、資源価格の高騰と円安のダブルパンチで、日本経済のコストアップ要因となり、
燃料や食料の大幅価格上昇で、貧しい家庭を中心に国民生活に大打撃を与えつつある。

第二は、「高い法人税率」。
安倍政権は、経団連企業のために法人税率を下げた。
その財源として消費税を上げたから景気は良くなるはずがない。
大企業はおかげで増益を続けたが、前向きな投資はせず、株価上昇と役員給与の大幅アップになっただけ。
格差拡大の原因でもあり、世界では大企業の法人税率引き上げの議論が始まっている。

第3は、「厳しすぎる労働・解雇規制」。
自民党政権は、労働法制を無定見に緩和し、非正規雇用を4割にまで増やした。
一方で最低賃金は低いままで労働時間も異常に長い。パワハラ・セクハラも事実上放置。
これを「厳しすぎる」と言っていたのだから驚きだ。

第4の「経済連携協定の遅れ」も自民党による農業過保護政策が足かせになっていたのは周知の事実である。

第5の「厳しい温暖化ガス削減目標」に至っては、笑止千万。
先進国の中で断トツに環境規制が緩いのが日本。
おかげで再生可能エネルギー産業や電気自動車などの成長分野で日本は世界の競争から脱落してしまった。

第6は「電力不足」。
原発が動かないから電力が足りないと叫んでいたが、大嘘だった。
本来は原発に頼るより、再エネ比率を上げてエネルギー安全保障を高めるべきだったができなかった。

給与が高すぎ、国民から税金を取らずに企業から税金を取った、
正社員が多すぎた、TPPを遅らせた、環境に配慮しすぎた
原発をどんどん再稼働しなかった。
…以上、6重苦(キリッ)
とか言っている政党に投票する奴は馬鹿なんじゃないかと思う。