エネルギー政策 課題は
函館の学習会 講師3人の発言紹介
 日本のエネルギー政策について考える学習会「どうする、どうなる日本のエネルギー政策」(NPO法人南北海道自然エネルギープロジェクトなど主催)が8日、
函館アリーナ(函館市湯川町1)で開かれた。
研究者ら講師3人が聴衆約100人を前に講演と討論を行い、原発の問題点や自然エネルギー普及への課題などを説明。
電力の自由化によって消費者が買う電気を選べる時代を迎えたことを踏まえて「消費者が意思表示すれば政策は動く」と、
参加者たちに行動を呼び掛けた。
講師3人の発言を紹介する。

都留文科大教授 高橋洋氏
電力システム 分散型に
 日本では風力発電が広がらず、太陽光発電もカベに直面している。
これら再生可能エネルギー(再エネ)を拡大するには「電力システム」全体を改革する必要がある。
大きな発電所、長距離の送電網を持つ大手電力会社による「集中型」のシステムから、地域の企業や市民団体による「分散型」システムへの変更だ。
 具体的手段は電力自由化と再エネの大量導入だ。
電力自由化の柱は発送電の分離と(電力会社の異なる地域間で電力を融通する)広域運用だ。
発送電分離では、大手以外も送電網をフェアに使えるようにしなくてはならない。
広域運用は(発電量が変動する)再エネの大量導入にプラスだ。
 再エネを巡っては、電量会社が送電網への接続を「容量に空きがない」と拒みながら、実際はガラガラという問題が浮上している。
合理的に使った上で増強すべきだ。
 電力会社は国策に従って原発を進めてきたが、地域独占体制で総括原価方式だから成り立った。
自由化の中で消費者に選ばれる企業になるのが当たり前、
消費者が(電気を選ぶ形で)意思表示すれば、国のエネルギー政策が動き、地域にとって好ましい政策になる。

龍谷大教授 大島堅一氏
原発のコスト 公表して
 政府は今年、エネルギー政策の根幹となる「エネルギー基本計画」を4年ぶりに改定する予定だが、策定プロセスに問題が多い。
原発、火発などの電源の経済性を正しく評価して反映させるべきなのにそうしておらず、
2015年に政府が定めたエネルギーミックス(電源構成)を実現するための計画になっている。
政策決定の手順があべこべだ。
 原子力では、東京電力福島第1原発事故の前に建設した原発に追加安全対策を施すというモデルでコスト計算している。
今は福島の事故以前の2~3倍の建設コストがかかるが、そうした現実的な想定をしていない。
ちなみに、電源開発の大間原発もコストがどこまで膨らむか見通せず、電源開発は経済性のない原発を造ろうとしている。
 原発には国が手厚く支援しているのに、現実のコストに関するデータが公表されていない。
福島第1原発事故の対応費用は23.5兆円とされているが、根拠がはっきりせず、廃炉やバックエンド(使用済み燃料の処理)の費用も不明確で検証不能だ。
事故処理などのコストの大半は税と電気料金で賄うのに、請求書を持っていく先だけ決めて中身を見せないようなものだ。

自然エネルギー財団事業局長 大林ミカ氏
自然エネ 長期目標必要
 自然エネルギーは世界的に発電量が拡大し、発電した電気の入札価格が欧米では大きく下がっている。
送電網への接続や発電に関する保証措置などでリスクが下がり、競争性が強まっているためだ。
太陽光発電は2015年から10年間で発電コストが6割下がるという予測もある。
 だが。日本は他国に比べて太陽光、風力とも発電コストが飛び抜けて高い。
陸上風力は世界一高い価格帯にあり、発電量の伸びも止まっている。
電源構成の中での自然エネルギーのシェアについて、政府が長期目標を掲げていないので、企業も投資しにくい環境だ。
 政府が目標を掲げれば、基盤はできていく。
コンピューターメーカーの米アップルは「100%自然エネルギー」を目標に掲げている。
(同社に部品などを供給する)サプライチェーンにも自然エネルギー購入企業が広がる可能性がある。
自然エネルギーを支える上で、電気を買う側の動きが重要になっていく。
 日本では自然エネルギーの事業者が、農業関係法などさまざまな規制に直面している。
行政が立地可能な地域を明示するとともに、事業展開できる条件をそろえないとつぶれてしまう。