>>721
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――やはり、福島原発事故はまだまだ多くのことが隠蔽されているようですね。
よく福島原発事故とチェルノブイリ原発事故が比較されますが、
情報公開という側面では、日本のほうが不十分であるという話は事実なのでしょうか?
阿部  日本の状況を「チェルノブイリ法」
(チェルノブイリ原発事故から5年後にウクライナで制定された)に当てはめて考えてみると、
現在の南東北〜関東のかなりの部分が「第1ゾーン」(特別規制地域、立入禁止区域)程度の
放射能汚染地域ですよ。
 しかし、環境省は住民が1日のうち16時間を遮蔽効果のある屋内に居るものとし、
さらにその16時間分の放射線量について木造建築の場合でさえ6割も差し引きますが、
ウクライナではこのような差し引きはありません。
そのうえ(環境省は)「内部被曝は無視できる」とまで語っています。
 また、日本では数値が低くなる地上1mの高さで測定していますが、
ヨーロッパでは汚染された地面に線量計を近づけ、
地表1cmの高さで測定することになっています。
ですから、環境省式の年間追加被曝線量1mSvは、
ウクライナやベラルーシなら5mSv相当ほどになりますよ。
あちらでは、原発事故から2週間後の1986年5月10日時点を基準値にして
第1から第4までゾーン分けをしており、
1mSv以上が測定された地域の人々には移住のために経済補償がなされるのに、
日本では7年が過ぎてもまだ年間 100 mSvまでは“住める”と言っていることになります。
 福島原発事故の放射線放出量は、最初の150 時間だけでも31の放射性核種・同位体で
約1138京ベクレル。
その中には、キセノンの次に多く出たはずのクリプトン-85(85Kr)も、
ウランもトリチウムも含めていませんので、
CTBTO(包括的核拡散禁止条約機構)のデータを元にした各国の研究機関の見積もりからしても、
実際には少なくともチェルノブイリの放出総量の2倍には達しているのではないでしょうか。

■対外防衛的側面からも原発は危険!
――やはり阿部さんは、原発に反対ですか?
阿部  もちろん反対です。原発は人が動かすものだし、
東京電力は原発事故の前にも現実の危険性やデータの隠蔽を繰り返してきました。
そして対外防衛を考えても原発は極めて危険です。
もしも、北朝鮮がミサイルを衛星で誘導する技術を持ち、
原発が狙われたら日本は大惨事になるでしょう。
そのようなミサイルでなくても、潜水艦で日本海側の原発に近づこうとする国はあるかもしれませんよ。
 そして、現在までに3500兆ベクレルほどのトリチウムの汚染水が
福島第一原発の敷地内のタンクに溜められており、
原子力規制委員会はこれを太平洋に流そうとしています。
日々、西の阿武隈山地から流れてくる地下水を汚染水として混ぜ込んで薄めても、
放出されるトリチウムの総量は変わりませんから、
薄めれば流しても問題ないという話ではないでしょう。
それに、地上でも放射能汚染・被爆・移住の問題は解決されていません。
原発は廃炉にしても危険だという意見もありますが、
燃料棒を安全な施設に搬出し、放射線や放射性物質の漏れがないようにすることで
危険性は減らせるのです。