昨年は「なぜ移住しないのか?」というご心配も頂いた。
また被害を軽減する一助になればと思って提供した情報も
「注意すれば大丈夫」という誤解を与えたかも知れない。
一般論として言えば、居住継続は決してお勧めできない。

自分が東京に下した判断は、早川氏が当初福島県について
下した判断に近い。つまり大人が仕事として滞在する限り
において許容されるというレベルでその期間は数年程度。
住居はクールスポットの低線量物件を選び、換気はHEPA。
飲用調理水はミネ水。食材外食は産地明確なものに限定。

実際、40代先輩や30代後輩と自分の生死を分けたのは、
こうした違いしかない。「近くに旨い店見つけたんだが」
と彼らに呑みに誘われ、「申し訳ないが」と断ったことが
昨日のように思い出される。心情的には今も心苦しいが、
あの夜の別れが此岸と彼岸との別れだったように思える。

自分も東京近辺は「住むべき地ではない」とは判断した。
事故後1年の間、情報を収集し自ら計測を重ね、移住先で
食っていくだけの見通しも立った。そんなとき、先述した
元上司に防災関係の大仕事を任され、「当面は残留する」
という判断に傾いた。「シンガリを務める」覚悟をした。

昨今、若者の貧困や奨学金が問題となっているが、自分も
貧しさのうちに学んだ一人である。幸いにして官費で学び
授業料免除や奨学金の助けを得ることもできた。日常生活
でも商店街や食堂のオッチャン・オバチャンに「学生さん
だろ」と助けられた。この国の恩には報いねばならない。
(特定の政体・政党・政権などを信奉するものではない)

そうした極めて非合理な個人的感情を捨象すれば、やはり
東京近辺は「住むべき地ではない」と思う。そして自分も
シンガリの務めを終えた時点で、東京を去るのだと思う。