上空の電子数 熊本地震前にも乱れ「内陸直下型では初」京都大 2017年03月02日 13時50分
http://www.hazardlab.jp/know/topics/detail/1/9/19271.html

昨年4月の熊本地震が発生する1時間前から、「電離圏」と呼ばれる大気中の電子の数に異常が起きていたことが、京都大学の研究グループに
よって突き止められた。

電離圏とは、地表から高さ60キロ以上に存在する電子が高密度に広がる大気の層を指し、電子の数や電波の周波数の違いによって、
衛星通信に障害をもたらす原因となっている。

教授らのグループは昨年、国土地理院が運営するGPS衛星の観測データを利用して、電離圏の異常を検知し、巨大地震を予測する手法を開発。

この手法を使って、熊本地震のときの電離圏の乱れを解析した結果、マグニチュード(M)7.3の本震が起きた4月16日(午前1時25分)の1時間前
から20分前にかけて、電離圏に異常が起きていた事実を突き止めた。

熊本地震では、前震が起きた4月14日未明にも、宇宙嵐が原因の電離圏の乱れが観測されていたため、16日の異常が地震由来なのか宇宙の
影響によるものか、当初は識別ができなかった。しかし、16日の観測データでは、九州地方を中心とした局所的な変化だったことから、熊本地震
との関連が裏付けられた。

研究グループはこれまでにも、2011年3月11の東日本大震災や、その二日前に起きた三陸沖地震、同年4月の宮城沖M7.1地震で、電子数の
増減を確認しているが、内陸直下型地震で異常をとらえたのは今回が初めてだという。

今後は大地震直前に電離圏の異常が起きるメカニズムの解明を目指すとともに、将来的にはM7クラス以上の地震予測システムの開発のための
実証実験を進めるとしている。

この研究成果は、米地球物理学会の科学誌『Journal of Geophysical Research Space Physics』に掲載された。


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本震が発生した2016年4月16日午前1時25分の直前0時45分に観測された電子数の異常を示した地図。
九州地方に集中して異常が起きている(京都大)

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熊本地震発生1時間前から見られる GPS 観測局とその周辺30局で見られる電離圏の異常を時間経過で示したグラフ(京都大)

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大地震発生直前に、上空の電離圏と地上で起きる異常については、多くの研究者がそのメカニズムを調べている(京都大)