小峰 「東電福島第一原発の事故はチェルノブイリ原発事故よりもひどいのか」という件についてで
すけど。

菊池 「チェルノブイリ事故と比較してどうか」という問いへの答えかたはひととおりじゃないよね。チ
ェルノブイリ事故に匹敵する大変な事故だったという言い方はもちろんできるし、様々な数字を比較す
ると、チェルノブイリ事故より規模は小さかったと言うこともできる。

小峰 何を問題にしたいかによりますね。

菊池 そう、観点によって答は変わる。ただ、少なくともチェルノブイリ事故よりもひどくはなかった。

小峰 ひどいというのは、どんな根拠で、何がひどいのか、ってことを知りたいですね。

菊池 事故の規模の話をしてるひとたちが問題にしてるのは、放射性物質の放出量かな。チェルノブ
イリより2倍ひどいとか20倍ひどいとか、いろいろ言うひとたちはいるけど、そんなことはないよ。ざっく
りと言ってしまうなら、東電事故はチェルノブイリ事故より「規模がひと桁小さい事故」だと考えられて
いる。それを「ひと桁も違う」と考えるのか「ひと桁しか違わない」と考えるのかは、なにを問題にする
かによるんだけど。

小峰 ひと桁小さい。……でも、その「桁が違う」っていうの、科学者の使う言葉の中でわかりにくい
もののひとつ。『いちから聴きたい放射線のほんとう』でも触れましたが

菊池 あんまり細かい数字に捉われずに、「桁」で大きくとらえるのもだいじなんだよ。

小峰 じゃあ、わかるように、たとえば規模からいくと?

菊池 放射能汚染された面積はチェルノブイリ事故よりひと桁小さい。

小峰 そこを「ひと桁」で済まさずに、もうちょっと詳しく説明してもらえます?

菊池 ふたつの事故で地面が同じくらい汚染された範囲の面積を比べると、汚染の広がりはチェル
ノブイリ事故の6%とか8%とか、それくらい。

小峰 6〜8%くらいだから……

菊池 10分の1弱と思っておけばいいよ。

小峰 汚染の範囲は約10分の1弱。

http://synodos.jp/science/15817