新たな官僚機構、原子力損害賠償・廃炉等支援機構が発足し、国民負担が拡大、廃炉専門家が福島第1に常駐(8/19 日本経済新聞)
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 政府は18日、東京電力福島第1原子力発電所の廃炉や汚染水対策を指導する原子力損害賠償・
廃炉等支援機構を発足させた。今後30〜40年続く福島第1事故の収束を東電任せにせず、国の関
与を強める狙いだ。約50人の技術者や専門家を新機構に集め、数人は福島に常駐する。政府内で
は原子力規制委員会が福島第1の安全を監視しており、役割分担が課題となる。

 2011年9月に発足した原子力損害賠償支援機構は東電に賠償資金を交付し、経営を監視してき
た。昨年、福島第1の汚染水問題が深刻となったのを受け、政府・与党は対策を協議。東電に廃炉
や汚染水対策を指導するため、原賠機構の機能を拡充することにした。今年5月に原賠機構法が改
正され、新機構に廃炉支援の機能が加わった。

 新機構の主な役割は廃炉の中長期的な戦略を練ることだ。足元では汚染水の発生を止める作業
が優先されているが、廃炉で最も困難なのは原子炉内で溶け出した核燃料(デブリ)の取り出しだ。
新機構は20年度にも始まるデブリの取り出しに向け、原子炉内を除染する手法などを検討する。

 中長期的に廃炉を効果的に進めるため、研究開発の方針もつくる。デブリの取り出しや原子炉内
の除染には大量のロボットが必要。新機構が限られた資金の中で最大の効果を上げられる開発計
画をつくり、東電や研究機関、メーカーが実行する戦略だ。新機構には東電の取り組みが不十分な
場合に、作業の是正を命じる権限も持たせた。

 組織には専門家を集めた。民間の廃炉研究機関でトップを務める山名元・京大教授が新機構の副
理事長に就任する。実際に廃炉の戦略や研究計画をつくる「廃炉等技術委員会」には、経済産業省
の汚染水処理対策委員会の委員長を務める大西有三・関西大特任教授など8人の専門家が就く。
米国、英国、フランスの専門家4人も新機構に汚染水対策などを助言する。

 課題となるのは、福島第1の安全を監視する原子力規制委員会とのすみ分けだ。規制委は地下坑
道からの高濃度汚染水の抜き取りなど、足元の作業で東電に多くの注文をつけている。経産省幹部
は「新機構は中長期的な対策に集中する」とすみ分けを目指すが、汚染水対策の司令塔が二重とな
る懸念がある。

 新機構は政府による福島第1への関与強化を求めた与党の強い働きかけでできた経緯がある。政
府はこれまで廃炉・汚染水対策に計1700億円弱の国費を投入した。廃炉費用は東電が約2兆円の
資金枠から拠出するのが原則だが、新機構の発足で追加の国費負担を求める声が与党内などで上
がる可能性もある。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF18H0W_Y4A810C1EE8000/