問題深刻、高齢化で「8050」から「9060」へ 予備軍拡大の懸念も
2021.11.23 08:30
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 高齢の親が長年引きこもる子供を支える「8050」問題と呼ばれる家族形態が親子の高齢化・長期化により、「9060」問題へと移行し始めている。新型コロナウイルス禍で、不登校の小中学生は過去最多の約19万6千人に上り、引きこもり予備軍拡大の懸念も高まっている。高齢化・長期化が進むほど、当事者との関わりが困難になる傾向も強く、支援者らが早期介入の必要性を訴えている。

 「夜は眠れていますか」

 「…」

 「少しでもお声を聞かせていただけないですか」

 「…」

 東京都葛飾区にある自宅の部屋にこもった40代後半の男性は、区の高齢者相談センターの女性担当者がふすま越しに呼び掛けても押し黙ったままだった。

 男性は80代の母親と50代の姉との3人暮らし。母親には認知症の症状があり、「弟が母親をたたいたり、『ばかやろう』と大声で怒鳴ったりする」と姉からケアマネジャーに相談。センターに高齢者虐待の疑いがあると連絡があった。

 男性は不登校で高校を中退して以来、30年近く引きこもりを続けている。女性担当者は男性のもとを20回以上訪れ、支援の手をさしのべたが、男性は一言も発することがない。玄関前で鉢合わせしたときにも、無言で走り去られた。結局、母親は本人の希望で高齢者施設に入ったが、男性は支援につなげられていない。