本稿で題材としている福島県庁では、知事部局における人事セクションは「人事課」であるのに対し、メンタルヘルスの担当は、同じ人事課内ではあるものの、人事セクションとは別に区分される「福利厚生室」というセクションである。また、同県教育庁における人事セクションは「教育総務課(事務系職員)」または「職員課(教員系職員)」であるのに対し、メンタルヘルスの担当は「福利課」という完全に人事セクションと分離されているセクションである。
 ゆえに、業務量の多寡や自殺した職員の人員配置状況などに精通しない、福利厚生セクション(給付事業・年金事業・福祉事業など)においてメンタルヘルス対策を講じるという現状が生まれ、やむなくメンタルヘルス相談業務の充実という、当たり障りのない一般論的な対応で済まされてしまうものと推測できる。
 そして、このような人事セクションとメンタルヘルスを担当するセクションの分離は決して偶然ではなく、必然的なのではないかということを仮説として筆者は主張したい。