サイゾー 2019年4月号
『神保哲生×宮台真司の「マル激 TALK ON DEMAND」』
【勤勉さで経済大国に】という日本人の誤認
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【神保】 アトキンソンさんからご覧になって、なぜ日本人はそんなに頭が固い人が多いのだと思われますか?
【アトキンソン】 ひとつはやはり、戦後の成功体験が邪魔をしていると思います。「途上国だった日本が、世界第2位の経済大国
になったと言いますが、しかし実際には、戦争が終わる直前の時点で、日本はすでに世界6位の経済大国だった。1945年にGDP
はそれまでの半分まで減っていますが、戦争が終われば元に戻るのは当然です。

【アトキンソン】 実際、90年代に入って人口が伸びなくなりましたが、それまで生産性を上げることで国が成長してきたわけでは
ないので、急に経営戦略の舵を切ることもできず、それが「失われた25年」とされました。しかし、失われたのではなく、人口が
増えなくてもビジネスのやり方を変えなければ、横ばいになるに決まっている。世界のGDPランキングを見れば、先進国の中に
おいては、アメリカ、日本、ドイツと、人口の順番に並んでいるんです。

【アトキンソン】 日本は「管理」、つまり守りはうまいんです。だから戦後は良かったのですが、一方で「経営」はやったことがない
と思います。つまりアメリカのUberのように、ネットとスマホの時代なんだから、タクシーの概念を変えていってもいいじゃないか、
という発想の転換ができない。
 逆に言うと、発想の転換ができるということは、再検証を常に行い、「違うやり方がないのか」と考え続けているということで、
それが経営者の仕事なんです。管理をする人は、報告書が月曜日までに完璧にできたか、線を引いて書き直すのも許さない、
ということに終始する。

【アトキンソン】
一般に、生産性に問題があるのは労働者が悪いとされ、クビを切れないのはダメだとか、働き方改革だと言いますが、分析すれば
するほど、経営者の責任が大きい。終身雇用がダメだとか、非正規を増やせというのは、間違った方向に進んでいると思います。