気象庁は、気象業務法に基づき、気象庁以外の者に気象観測施設の設置を届け
出させ、その情報を保有しています。これは、設置者どうしのデータ交換(さらには広
範なデータ提供)を促進したり、同種の観測施設の重複を防止したりして、国全体と
しての気象観測の有用性を向上させるという同法の趣旨(気象業務法制定時の提
案理由説明、『気象業務法の解説』(日本気象協会、1957年)など)を実現するため
に、昭和60年ごろまで『気象業務法による観測施設届出受理箇所一覧表』として気
象庁から刊行されていました。
 しかし、気象庁は昭和62年に突如その刊行を停止し、平成22年には、情報公開請
求に対する開示というかたちで情報提供を再開したものの、観測施設の場所や設置
者の氏名・住所、気象測器の検定合格の状況など、観測データの入手を希望する者
が観測施設を評価したり施設設置者との接触を図ったりするために必要な情報は非
開示としています。
 これでは、上記の法律の趣旨に沿った情報提供ではなく、また、かつて自由であっ
た情報の利用について、申請者負担を課し、利用価値を大きく損なう非開示設定を
するのは、情報公開手続の恣意的な運用であり、オープンデータ化を推進する「世
界最先端IT国家創造宣言(平成25年6月閣議決定)」などの国の施策に反していま
す。
 最近、たとえば飲食店の営業許可リストのように、個人情報を含んでいても公共性
が認められる行政情報については、特に申請をしなくても、自治体などのホームペー
ジからいつでもダウンロードできるようになっています。気象観測施設の届出制度
は、気象観測の公共性を理由としていますので(気象庁『より良い観測のために』な
ど)これを気象庁ホームページなどから一切の手続なしに完全なものが入手できる
ようにする規制緩和(情報提供の再開)を行うのは、国の機関として当然です。
 これによって、気象庁より高密度かつ良質な観測施設へのアクセスが容易になれ
ば、中小企業や新規参入者を含む民間企業が自ら観測施設を作ることなく低コスト
で利用できる気象データが著しく増え、新しい気象情報サービスを、特にオリンピック
期間限定のようなアドホックなサービスを展開しやすくなるなどの経済効果も期待さ
れます。