筆者がかつて勤めていた横浜市役所では、2000年代当初から、話題になりだしていたことがある。

それは、「この子は一度も働いたことがないのですが、親が亡くなった後、どうすればいいですか」と、
40〜50代の娘を連れて、高齢の親が区役所の窓口にくるというのだ。

彼女たちが学校を卒業したころは、就職せず、花嫁修業と称して、家でお稽古などをして過ごし、
それなりの時期が来たら結婚することは珍しいことではなかったのだろう。
だが、たまたま縁なく結婚せず、就業経験もないまま40〜50代になった女性たちは、
もはや外に出て働く、他人と交わるということも難しそうな状況だったという。

当時は若者への就労支援が始まりだしたころであったが、
無業のまま40代になった女性には支援の仕組みもなかった(いまでもほとんどない。
多くの就労支援は30代までである)。

この女性たちが次に公的サービスにつながるときは、親が要介護状態になるときか、
親が亡くなって年金収入も絶え、生活に行きづまって生活保護の窓口にくるときだ、
という危機感を生活保護課では持っていた。