■平沢勝栄氏に対する集団ストーカー事件
ソース:『自民党と創価学会』  佐高 信 (集英社新書 2016/5)

 そして二〇〇〇年の総選挙を野中は自民党幹事長として指揮する。
公明党に気を遣う野中は、公明党の山ロ那津男とバッティングする平沢の公認をなかなか下ろさなかった。
 それどころか、総選挙前、東京・六本木の全日空ホテルで平沢が開いたセミナーの講師に予定した後藤田正晴に圧力をかけ、
直前になってそれを辞退させる。後藤田は平沢の警察庁時代の先輩である。
「申し訳ないが、勘弁してくれ」
 と謝る後藤田に、平沢が、
「どういうことですか」
 と尋ねる。
「党から、絶対に行かないでくれといわれたんだ」
 と答える後藤田に、
「野中広務さんでしょ」
 と問い返すと、
「訊かないでくれ」
 と言われた。
 公認が下りない理由は、「野中広務さんは、いわば公明党の幹事長になっている」とか、
「自民党の悪口を言っている」など、平沢の発言に対してのものばかりで苦笑するしかない。
 ようやく解散日当日に公認が出たが、自民党公認候補のドンジリだった。
 平沢の後援会は、万が一公認を出さなかったら脱党するとまで口にしていたので、渋々それを出したのだろう。
 平沢は選挙演説で訴えた。
「いま自民党のことを一番思っているのは、わたしだ。野中幹事長から、『自民党の悪口をいうなら出ていけ』といわれたが、
なぜわたしが出なければいけないのか。公明党のいいなりになっている野中幹事長が、公明党にいけばいいじやないか。
わたしは地元の自民党支持者から、出ていけ、といわれたなら出ていく。
しかし、自民党支持者のみなさんは応援してくれている。みなさんが応援してくれているのに、なぜわたしが出なければいけないのか」
 聴衆からは大きな拍手が湧き起こったが、平沢が公明党の仕業と思つている嫌がらせはすさまじいものがあった。
 車を尾行されたり、ボス夕ーを焼かれたり……。街頭で聴衆と握手をしているとき
、いきなり胸ぐらをつかまれる暴行も受けた。以来、警察は平沢にボディガードをつける。
 平沢の選挙区の家庭すベてに怪文書もバラまかれた。深夜一〜二時間の間である。