私は金のために取引をするわけではない。金ならもう十分持っている。一生かかっても
使い切れないほどだ。私は取引そのものに魅力を感じる。キャンバスの上に美しい絵を
かいたり、素晴らしい詩を作ったりする人がいるが、私にとっては取引が芸術だ。私は取
引がをするのが好きだ。それも大きければ大きいほどいい。私はこれにスリルと喜び感じる。

大方の人は私のビジネスのやり方をみて驚く。私は気楽に仕事をする。アタッシュケースは
持ち歩かないし、会合の予定もあまりぎっしり入れないようにしている。可能性を多く残し
ておくのが私のやり方だ。組織化しすぎると、想像力や企業家精神を発揮する余地がなく
なる。私は毎日オフィスに来て、今日はどんなことがあるだろうと期待するのが好きだ。

私の取引のやり方は単純明快だ。ねらいを高く定め、求めるものを手に入れるまで、押し
て押して押しまくる。時には最初にねらったものより小さな獲物で我慢することがあるが、
大抵はそれでもやはりほしいものを手に入れる。

取引をうまく行う能力は、生まれつきのものだと思う。いわゆる天賦の才だ。べつに自慢
して言っているわけではない。これは知能の高さとは関係ない。多少の知力は要するが、
一番大事なのはカンだ。知能指数170、成績オールAという、ウォートン・スクール一の
秀才でも、これがなければ企業家として成功することはできない。