スティーブン・ヘイル「解説:MMT(現代金融理論)とは何か」(2017年1月31日)
2018年2月2日 by chietherabbit
Steven Hail, “Explainer: what is modern monetary theory” (The Conversation, 31 January 2017)1
オーストラリア・アデレード大学経済学部講師   スティーブン・ヘイル
https://econ101.jp/%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%98%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%80%8C%E8%A7%A3%E8%AA%AC%EF%BC%9Ammt%EF%BC%88%E7%8F%BE%E4%BB%A3%E9%87%91%E8%9E%8D%E7%90%86%E8%AB%96/
政府支出削減を求めるという困難な選択をするときに、俗に言う『予算ブラックホール』について心配しない経済学
の学派がある。バーニー・サンダーズ氏のチーフ経済アドバイザーであったステファニー・ケルトン教授のようなMMT(現
代金融理論。以下、MMT)提唱者は、オーストラリア政府は予算を均衡する必要はなく、経済を安定させる必要
があると主張する。そして、彼らの主張は(今までの経済学のものとは)まったく違うものだと言う。

MMTとは、1990年代にオーストラリアのビル・ミッチェル教授(和訳)とともに米国アカデミアのランドル・レイ教授、
ステファニー・ケルトン教授および投資銀行家でファンドマネージャであるウォーレン・モズラー氏により経済運営
の手法として開発され、ハイマン・ミンスキー、ワイン・ゴッドリー、アバ・ラーナーといった先駆的経済学者のアイ
ディアをもとに築かれた理論だ。著名経済学者ジョン・M・ケインズの研究についてのミンスキーたちの解釈は、
1980年代には支配的になったものとは非常に異なっている。

1980年代までには、ケインズは高失業率の場合のみ財政赤字を許容することを主張する経済学者と見られるよ
うになっていた。ラーナーは、1943年に『機能的財政と連邦政府』という論文の中で、ケインズ主義経済学者は完
全雇用を維持するには必要なだけ財政赤字を発生させなければならず、この赤字は普通のことして受け止められ
なければならないと述べている。1943年4月にケインズは友人で経済学者でもあるジェイムス・ミードに宛てた手紙で、
ラーナーについて、「彼の議論は非の打ち所がない。しかしこれを達成するには天の助けが必要だ」と綴っている。