【正論】一億総活躍の取り組みこそ先決 日本財団会長・笹川陽平
http://www.sankei.com/column/news/180905/clm1809050004-n1.html
 政府は6月に閣議決定した「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針)で、これまで原則禁止としてきた
「単純労働」分野での外国人就労を受け入れる方針を打ち出した。
 建設や介護分野などの人手不足は深刻で、新方針を否定するつもりはない。しかし、外国人労働者の受け入れだけで
急速な少子高齢化・人口減少に対応するのは不可能。政府が掲げる「一億総活躍社会」こそ、この国が目指す新しい
社会の姿であり、実現に向けた取り組みが急務である。

 ≪多くを期待できない外国人就労≫

 安倍晋三首相はその姿を「若者も高齢者も、女性も男性も、障害や難病のある方々も、一度失敗を経験した人も、
みんなが包摂され活躍できる社会」と説明している。外国人労働者の受け入れも、その一環として位置付けられるべき
で、拙速な対応は「その場しのぎ」「付け焼き刃」になりかねない。
 日本財団では2015年、「はたらくNIPPON!計画」を立ち上げ、誰もが参加し活躍できる多様性のある社会の
モデルづくりを目指してきた。関連して学識者らが行った試算では、障害や難病、ひきこもりなどが原因で「働きづらさ」
を抱え、就業を希望しながら職を得ていない人は、15〜64歳の生産年齢人口に絞っても1600万人を超す。
 労働力は国の要であり、国の安定的発展を図る上でも、こうした潜在労働力の有効活用は何にもまして必要である。
骨太方針では、最長5年の技能実習訓練を終えた外国人がさらに5年間、日本で働ける新たな在留資格を来春までに
設け、25年までに人手不足が特に深刻な建設など5分野で50万人超の外国人労働者を受け入れるとしている。
 日本で働く外国人は昨年10月時点で約128万人。10年間で2・6倍に増え、産業界の需要も高い。しかし、
労働力不足は不法移民問題で揺れる欧州連合(EU)も含め先進国共通の課題で、言語や生活習慣の違いなど
他の先進国に比べ日本のハードルは高い。技能訓練生の多くを期待する東南アジア各国も高度成長に伴う国内の
労働需要の高まりで早晩、外国への労働力供給は難しくなる。
《続く》