『ニューズウィーク日本版』 2018年8月14日号
特集:奇才モーリー・ロバートソンの国際情勢入門
中国 「中華帝国」復興の設計図
ttps://www.newsweekjapan.jp/magazine/218124.php
 Active Measures というスパイ用語があります。情報収集のためにターゲットを動揺させたり、相手にお金やセックスの
インセンティブを示すことで自分に有利な方向へ動かす諜報作戦のことです。最近明るみになったのが、中国共産党による
ニュージーランドへのアクティブ・メジャーズです。
 これはカナダの諜報機関が5月に発表した報告書で警告しているのですが、中国資本がニュージーランドのビジネスから
大学の教育プログラムから研究施設にまで入り込んでいる。つまり知的エリート層の多くが中国共産党のターゲットになって
いるらしいんです。

 さらに中国は、アメリカ、ニュージーランドの中華系メディアに入り込むために「並々ならぬ努力」(報告書)をしている。
以前はこうした中華系メディアには台湾資本が広告を掲載していたこともあって民主的な内容だったんですけど、全部淘汰
されて中国政府寄りの内容になっている。
 また、オーストラリアでは地元に暮らす中国人や台湾人の言動をも監視し、現地の華僑も中国共産党への反対意見を
口にできない環境を整えようとしています。まさにアクティブ・メジャーズですよ。ニュージーランドは小さな国であり、
中華コミュニティーもアメリカやオーストラリアと比べて小さいので中国は実験的にやっているのでしょう。

 ただ、欧米も日本も今後爆発的に成長する中国の国内市場に依存しています。日本はおそらく50万人や100万人単位の
中国人を単純労働者として受け入れるでしょう。その依存の構造がまさに中国の影響圏へと自らを組み込むことにもなります。
先進国は「カモネギ」になるのが好きなんだなあ、という気持ちで眺めております。