・・・2001年9月の米中枢同時テロで、テロ資金をストップするため、ブッシュ(子)米政権は
国際送金に厳しい規制をかけた。ソマリアにあったアフリカ最大の国際送金サービス
「バラカート」が資産凍結措置を受けた。

テロ資金の流れを止める一方で、合法的な国際送金を促進させる国連開発計画(UNDP)
のプロジェクトが立ち上がり、05年、イスマイルは法令順守アドバイザーに任命される。
「国際送金には数百万の人々を貧困から救い出す力がある」という強い信念があった。
しかし、わずか2〜3週間でイスマイルは思いもしなかった事態に巻き込まれる。
ナイロビでUNDPのマネジメントやコンサルタントに関わっていた上層部に不正と腐敗が
はびこっていたのだ。

「ケニアのような国では、ほとんどの国連職員が自分の身の安全を守るため、不正には
目をつぶり、黙っていました。報復のリスクを顧みず不正を告発するのか、それとも沈黙
するのか、深刻なジレンマに陥りました」とイスマイルは肩を落とした。

眠れない夜を数日過ごした後、イスマイルは不正に立ち向かう覚悟を決める。
06年2月19日、日曜の朝だった。ナイロビのインターネットカフェから国連の不正告発
ホットラインに匿名で不正の詳細を伝えた。ニューヨークから調査チームがすっ飛んできた。
しかし、彼らの目的は不正を暴くことではなく、内部告発者を探し出すことだったのだ。
https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20170822-00074789/