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また経済政策の面では、トランプ氏のような保護主義を直接支持することも避けていた。政治的には
中道派のビジネス・ロビーを警戒させるからである。民主・共和両党とも、衰退過程にある有権者層
を惹きつけようとして成長しつつある有権者層にそっぽを向かれるのでは割に合わないと計算していた。

考えてみれば、オバマ大統領は2008年・2012年の大統領選のどちらも50%以上の得票率で
勝利したが、大学を出ていない白人有権者に関しては2桁以上の差をつけられていた。2016年の
選挙戦が本格的に始まる前、両党の主流派は、白人労働者階級の有権者は、せいぜい広範囲
の中道連合を形成しようという試みに対する不安定要因であり、最悪でも、消えゆく不可解な付
け足し程度だと考えていた。

トランプ氏が予想に反して候補指名を獲得したことで、白人労働者階級の有権者の存在が改めて
広く意識されるようになった。だが、筆者の近著においてこの層について研究したところ、トランプ氏の
政策アジェンダ自体が現実にこうした有権者を彼の選挙運動に引きつけているとは言い切れないようだ。

むしろ支持者の多くにとって、トランプ氏は力強い「抗議票」を意味している。白人労働者階級を
無視し、排除し、非難してきた、そして多年にわたり意味のある改革を怠ってきた二大政党の政
治エリートに対して、中指を立ててやるのだ。