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「ノーマンと『戦後レジーム』 ― 近代日本を暗黒に染め上げた黒幕」
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 ご承知の通り GHQ の占領政策というのは,朝鮮戦争が始まって冷戦が始
まると,「逆コース」と言われる,占領初期のニューディーラーたちから政
策が変わります。変わると同時にノーマンの影響力というのも,失われて
いったようです。その後,先ほど申し上げましたように,51 年からアメリ
カの上院の司法小委員会でソ連のスパイ容疑で,糾弾が行われまして影響力
を失っていました。ところが,ベトナム戦争が終わった 75 年ごろから,『敗
北を抱きしめて』でピュリツァー賞を取ったアメリカの著名な学者ジョン・
ダワー・マサチューセッツ工科大学教授がノーマンを再評価する形で,ノー
マン理論が復活します。
 その背景には,アメリカのニューレフトと言われる人たちがベトナム戦争
のあと,共産化がアジアで進むと思ったところ,インドネシアの共産クーデ
ターが失敗してから,反共の ASEAN ができて,共産主義の強化,いわゆ
る資本主義の弱体化が彼らは必要だというふうに考えたのです。そこで資本
主義の弱体化のためには,ノーマンが唱えた過去を反省できない侵略をする
日本弱体化のノーマン理論というのが非常に都合が良かったため,この考え
が彼らの中心になったようです。その中心人物が,どうもジョン・ダワー教
授だったのではないかというふうに思います。その考えが,同じころに日本
でも伝わります。ダワー教授が言っているのは,アジアの民主化には日米同
盟を解体して,日本を弱体化する。アジアに対して日本は,もっともっと謝
罪しなくてはいけない。東京裁判が中途半端に終わったため,天皇の戦争責
任を改めて追及して,未完の占領政策を徹底しなくてはいけないというよう
なことを唱え始めたわけなのです。