日本と韓国における人身取引問題と政策形成過程の比較
郭 炳 益
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 2001 年 7 月、京畿道東頭川市にある基地村のナイトグラブで、フィリピン人女性 11 人を
監禁・監視し強制的に売春を行ってきた業者らが逮捕された。被害者の 11 人のうち 2 人が
偽造ビザ、残り 9 人が芸能ダンサーとしてE−6ビザを取得し入国、ASTBの紹介によって基
地村の風俗クラブに渡された。その後、業者と管理組織によってパスポートを取り上げられ、
店の2階に監禁され本人の意思に反して売春を強要されていた。彼女たちはフィリピン大使
館に逃げ込んで助けを求めたが21、人身取引に関する法律が存在しなかったため被害者ら
11人は結局、出入国管理法違反または淪落(売春)行為防止法違反などの罪に問われ、被
害者ではなく加害者として強制送還された。業者らは一人当たり70万ウォン(おおよそ
730USドル)を支払い、ASTBの代表者は、公文書を偽造することで 1 億 6,000 万ウォン(16
万 5,000USドル)を仲介費用として受け取ったのである。彼は人身取引の罪によってではな
く、文書偽造の罪によって訴追を受けた。多くの女性人権団体は、問題の背景には、安全保
障にかこつけた米軍への配慮があり、米兵への性サービスの提供を暗黙に行ってきたのが原
因であると指摘している。 これは、アメリカ軍が 1999 年まで、基地村で働く被害者女性に
対し性病検診を行い、薬品を提供してきたことや、性病にかかった女性を基地内の保険所で
義務的に治療を行ってきたこと、さらには性病に関する注意書籍を製作し外国人女性に配布
していたことなどから、アメリカ自身も人身売買に関与しているという批判である。このよ
うな状況の下で 2004 年度、行政に関する国政調査によると、議政府市、東頭川市、城州市、
平沢市および松炭市の五つの米軍駐在地区には 899 人の売春婦が存在し、そのうち 88 人
(9.8%)は韓国人で、881 人(90.2%)は外国人であるとされる 22。基地村を中心として
広がる性産業は、E-6 ビザの普及により国際的な人身取引問題として深刻になっていた。