>>272 (続き)

――それにしても不思議なのは、かつてはアメリカやイギリス自身も、捕鯨を積極的に行なっていました。なぜ反捕鯨国に転じたの
でしょうか。

【八木】 平たくいえば、欧米諸国にとって鯨の利用価値がなくなったからです。

アメリカがかつて捕鯨を行なっていたのは、鯨から採れる油が目的です。油を採取した残りは捨てており、鯨の身体全体を余すこと
なく利用した日本の伝統捕鯨とは対照的です。

しかしアメリカでは、1859年に石油採掘を始めてオイルラッシュが起きて以降、鯨油の需要がなくなりました。捕鯨は徐々に下火に
なり、1940年に中止を決めます。

さらにIWC創設後の1950年代、あらかじめ決めた制限頭数の捕獲量に達するまで各国が競争で鯨を捕る「オリンピック方式」が
アメリカ主導で採用されました。

「よーいドン」で一斉に競わせるとやはり日本は強く、50年代に日本は世界最大の捕鯨国になります。

ところが日本が勝ったのが面白くなかったのか、1959年には「オリンピック方式」が廃止され、63年にはイギリスが捕鯨を中止。

もはや鯨を捕る必要性がなくなった欧米諸国は反捕鯨に転換し、掌を返したように日本を非難するようになったのです。

――決められたルールのなかで日本が圧倒的な力を見せると、反捕鯨国はルールそのものを変えてしまう。

【八木】 反捕鯨国のなかには「欧米諸国には捕鯨に対する贖罪意識がある」と指摘する声があります。しかし彼らは反省している
のではなく、その都度、自国の都合のいいように理由を付けているにすぎません。

捕鯨を行なう人びとを時代遅れの後進国と決め付けるプロパガンダにおとなしく従ってきたのが問題だったのです。

(続く)