>>149 《続き》
 つまり、日本人にとって驚きなのだが、アメリカの国会議員および政府の一部は、日本軍が設置した「慰安所」をナチスの
強制収容所、強制労働施設、絶滅施設と同じカテゴリーのものと考え、情報を集めていたのだ。そして、バルビーやルドルフ
同様、これらの関係者は、戦争裁判で起訴されなかったので、その関係者の情報を公開して社会的制裁を受けさせようと
思っていたのだ。
         (中略)
 アメリカの国会議員や政府の一部は、ナチスと日本軍の違いがよくわからないために、歴代首相が「慰安所」を設置したの
は日本軍であり、「強制もあった」と認めると、どうしてもナチスの強制収容所、強制労働施設、絶滅収容所と同じイメージで
捉えてしまう。
         (中略)
「慰安所」システムについてのCIA文書も、前号と本稿で述べたように「村山談話」から「クマラスワミ騒動」までの国務省の
報告書とコメントだけだ。先の大戦中の日本軍に関するものはこれまで見たことがない。
 それもそのはずで、東京裁判を主導したGHQ自体、日本軍の「慰安所」を「アメニティ」(原語のまま。生活環境をよくする
ための施設)と捉えていた。このことはGHQの戦史課がまとめた「日本軍の研究」ではっきりする。OSS(戦略情報局)が
戦時中にまとめた報告書でも、「慰安所」を軍の士気を保つための施設と捉えてはいるが、犯罪性のあるものとは見ていない。
だから、CIA文書からは、日本軍の「慰安所」に関して戦争犯罪を示唆する文書はでてこないのだ。
         (中略)
 では、アメリカ側は、戦争犯罪があったことを示すCIA文書が出てこなければ「慰安所」システムをナチスの強制収容所や
強制労働施設と同じカテゴリーのものとして捉えるのをやめるのだろうか。ここが問題なのだ。
 前に述べたように、ニュルンベルク裁判と東京裁判を主導したアメリカは、1970年代以降、ユダヤ人団体やリベラル派国会
議員の圧力もあって、これらの裁判の起訴を免れた戦争犯罪者になんらかの形で制裁を加える方向で動いている。まず、
これが底流にあるということを押さえておかなければならない。
《続く》