>>148 《続き》
         (中略)
 しかし、これは当時の大統領ハリー・S・トルーマンの与り知らぬことだった。彼は、ナチスの戦争犯罪者をアメリカ政府の
ために働かせてはならないと命じていた。アメリカ陸軍およびのちのCIA(1947年設立)幹部が独断でしたことだった。
 1974年になるとユダヤ系アメリカ人から疑問の声が上がりだした。ナチスの幹部や強制収容所の関係者がアメリカの
市民権を与えられているだけでなく、政府から高給を得ているのではないか。下院議員のエリザベス・ホルツマンが調べて
みたところ、これが事実だということが判明した。
 しかし、前号で紹介した反論文も述べているように、戦勝国が敗戦国に戦争裁判を受け入れさせ、刑を執行させたならば、
それは最終的なものであって、事後に戦争犯罪者が見つかってもそれを裁くことはできない。
 したがって1978年のホルツマン修正法でできたことは、ナチス戦争犯罪者からアメリカの市民権を剥奪すること、そして
強制出国させることだった。
         (中略)
 そこでアメリカのユダヤ人団体や下院議員は、このようなアメリカに入り込んだナチスの戦争犯罪者の情報を公開するよう
にCIAに求めた。時を経るうちこうした情報はCIAに集められ、極秘文書として蓄積されるようになっていた。しかし、CIAは
国益を損なうとして応じなかった。
 そこで、下院議員カロリン・マロニーはCIAが蓄えているナチスの戦争犯罪に関連する情報を公開させる「ナチス戦争犯罪
情報公開法」を議会に提出し、1998年これを成立させた。2年後には「ナチス戦争犯罪・帝国日本政府情報公開法」とされ、
日本も加えられることになる。これが今日CIA文書といわれるものになった。
         (中略)
 さて、問題はなぜ「クマラスワミ報告書」をめぐる日米間の裏交渉の報告書がこのCIA文書からでてくるのかということだ。
同じボックスからは、村山富市以降歴代総理の「慰安婦」についてのコメントとそれに対する日本と外国のメディアの報道と
国務省担当者の分析をまとめた文書もでてくる。
《続く》