新潮45 2017年6月号
【CIA文書公開で判明!】
 「慰安所」はナチの収容所と同一視されていた/有馬哲夫
ttp://www.shinchosha.co.jp/shincho45/backnumber/20170518/

 アメリカ側の「慰安婦問題」に対するスタンスは日本にとって厳しいものがある。しかし、そこには、実は日本側に責任が
ない、あるアメリカ側の事情が絡んでいる。それは、「クマラスワミ報告書」をめぐう日米韓の交渉に関わる国務省文書が、
なぜCIA文書(正式名称は「ナチス戦争犯罪・帝国日本政府情報公開法関係文書」)としてでてくるのかと関係している。
 この事情を知ることは、実は「慰安婦問題」だけでなく「強制労働問題」、「731部隊問題」、「化学兵器廃棄問題」などを
アメリカ側がどのような文脈において捉えようとしているのか理解することにつながる。
         (中略)
 話は終戦期にさかのぼる。ドイツ陸軍参謀本部東方外国軍課の課長で、対ソ連インテリジェンスの元締だったラインハルト・
ゲーレンは、ドイツの敗戦を確信した時、アメリカは必ず自分が保有している数万点におよぶ対ソ連インテリジェンス文書を
欲しがるに違いないと考え、それを地中に埋めた。戦争が終わり、彼はアメリカ軍に捕らえられたが、彼の思惑通り、彼の話
を聞いたアメリカ陸軍准将エドウイン・シバートは、文書を欲しがった。掘り出されたこれらの文書の重要性についてシバート
から報告を受けたアメリカ陸軍省は、彼をアメリカに送るように命じた。こうしてゲーレンはニュルンベルク裁判を受けることなく、
アメリカ陸軍の対ソ連インテリジェンスの幹部としてアメリカに渡り、対ソ連諜報組織「ゲーレン機関」を作った。
 これ自体も相当な問題だが、もっと深刻なのは、彼が呼び寄せた元ナチスの幹部のなかにクラウス・バルビーなどがいた
ことだ。
         (中略)
 ゲーレンは自らの保身のためにも、元ナチスの幹部をリクルートして「ゲーレン機関」を強化しなければならなかったのだが、
そこにバルビーのような戦争犯罪者が「対ソ連インテリジェンスの専門家」として潜り込み、ゲーレン同様アメリカ政府から
巨額の報酬をもらっていた。
 このようなケースはインテリジェンス関係者に限らない。
《続く》