日本にとって注意すべきことは、欧州から中国への武器輸出の問題である。
フランスやスペインは中国への武器輸出解禁を強く主張していると聞く。武器以外に輸出競争力
のある産業が少ないからであろう。今後、金融業の収益が低下すればイギリスもそこに参加する
可能性がある。現在中国は欧州辺境諸国の国債買い支えを明言しており、それは欧州の中核
であるドイツの負担軽減にも繋がることからドイツも輸出解禁に賛成する可能性がある。

従って、欧州は経済的利益のために中国に武器を輸出し、ユーロファイターや航空母艦などの
武器を中国が入手する可能性が十分あると思われる。欧州製兵器で武装した中国軍は日本に
とってかなりの脅威となる。これは、日中戦争で日本が滅亡するという悪夢に繋がりかねない
危険を孕む。日本の対外貿易の生命線である台湾を欧州製武器で武装した中国が占領した
段階で事実上日本は滅亡する。

日本の対処策は三つあると思われる。一つは、経済的支援等で欧州から中国への武器輸出
停止を継続させることである。金銭的支援の他にも、欧州への日本企業の工場進出、日本による
欧州製武器の購入などの手がある。二つ目は、日本独自で、あるいは米国と協力して、欧州製
武器を上回る性能の武器を開発・整備することである。このいずれかによって日本は中国に
対する軍事的優位を維持することができる。

三つ目は、中国に対する軍事的優位の維持を諦め、外交によって平和を維持することである。
しかし、中国人は弱者に対しては強い態度に出る傾向があることは、第二次大戦後のチベットの
歴史を見れば明らかである。また、日中戦争による日中共倒れは欧州(特に先進国から脱落
しつつあるラテン圏)にとって非常に大きな利益になることも憂慮される。欧州の抱える経済問題
はそれほど深刻なのだ。従って、三つ目の選択枝は採るべきではないと私は考えている。