70年代は映画産業にとって過渡期だった(少なくとも日本では)。テレビドラマが力をつけて、アミューズメントパークが次々とオープンし娯楽の幅が拡大した。
そのような中007映画は世界を市場としてヒットを宿命づけられた作品として難しい制作状況にあったと思う。
頼みのショーン・コネリーは007から卒業宣言、後任のジョージ・レイゼンビーではコケた。
製作陣は原作者が推薦したロジャー・ムーアにシリーズ存続を賭けるしかなかったと思う。
そしてムーアは製作陣の期待に応えて(多少の批判的批評はあるものの)007映画の命脈を保った。
しかしいつまでもロジャー・ムーアのボンドで作品を続ける訳にはいかない。
製作陣は新たなボンド役者を探すが、世界市場を相手にした作品はコケたら役者生命の危機でもある。オファーに躊躇した俳優はさぞ多かったことだろう。
結局後任が決まらないままスケジュールとして新作をムーアが演じることとなり、それが「老いたボンド」と酷評されたのは気の毒としか言い様がない。
晴れてティモシー・ダルトンにバトンタッチできたときに「新生ボンド」をPRできたが、ムーアへの感謝を忘れてはいけないと思う。
ロジャー・ムーアがいなかったら007映画は21世紀まで存続できなかったであろう。