252 名前:名無シネマ@上映中[] 投稿日:2010/11/03(水) 22:31:07 ID:wr6dRACi
1940年代、ハリウッドの映画産業は石油産業に次ぐ産業へと成長し絶頂をむかえていた。映画プロデ
ューサーは演劇界から人材を探していた。そこで求められたのは多額の金で買い取った小説を原作の持
つ雰囲気や格調を損なうことなく忠実に映画に移しかえる能力であった。観客もそのような作品を求め
ていたからだ。ニューヨークの演劇界からも何人もの優れた人材が輸入された。数年後にはその中から
アカデミー作品賞まで獲得する者まであらわれる。そのような中で作られた映画の中に他と少し違う映
画があった。それはうち震え刻々と変化する生に触れていた、生の感情が服の上からではなく肌につき
ささった。登場人物は胸がしめつけられるような悲しみの中を生きていた。それは撮影された演劇とは
違うものを描こうとしていた。同時にそれは絶頂をむかえていたかに見えたハリウッド映画産業の斜陽
をも写しとっていた。その映画の題名は『夜の人々』。ニコラスレイという新人映画作家の作品だった。
しかし観客の多くはそんなものを求めていなかった。原作を軸にした手堅くまとめた作品を求めていた
のだ。少数の映画プロデューサーを除いて物語から逸脱するような映画など理解不能だった。しかし若
い観客の中には(未だ理解はできないが)何かに触れてしまった、と感じた者がいた。何かに触れてし
まった、もう後には戻れない。カサヴェテスやゴダールはその系譜に位置する映画作家だ!