「一番苦労したのは笑いのシーンですね。当時(1960年代)と今とを比べると、笑いの感覚がまったく違っていて。
何が違うかというと、当時は“ツッコミ”という文化がなかったんですよ。おそらく、これはビートたけしさんの登場以前と以降で分かれると思うんですけど、
少なくとも1960年代の東京には、何か面白いことを言ったりやったりした人に対してツッコミを入れる人はいなかった。
古い日本映画なんかを見ると、『こんなベタなセリフで笑わせてるつもりなの?』みたいなシーンがけっこうありますけど(笑)、でもその当時はみんな、
そのシーンを面白いと感じていたわけですよね。だから、そのへんのベタな感覚みたいなものは相当意識したし、今の笑いのセンスは持ち込まないようにも気をつけました。その塩梅が難しかったですね