「ファイブ・イージー・ピーセス」は、主人公がアイデンティティー
を求めて彷徨い続ける映画だけれど、「さすらいの二人」はそれと全
くの逆さまで、アイデンティティーどころか最期は自分の存在や痕跡
まで放棄してしまう悟りの作品だった。前者は暗く、後者は開放感に
満ちていてよかった。
ジャックには関係がないが、「さらば冬のかもめ」のハル・アシュビ
ー監督は本当に隠れた名匠だと思う。「ウディー・ガスリー わが心
のふるさと」なんか、もう現在のアメリカ人には撮れない名作だ。