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【小説】スナック眞緒物語【けやき坂応援】

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0001名無しって、書けない?(東京都)
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2019/01/26(土) 22:18:19.64ID:xbJzQvgN0
宮田愛萌さんのブログや「ひらがな推し」やでネタにされている架空空間「スナック眞緒」を舞台とした小説のスレです。

なお、「ひらがな推し」や宮田ブログでの「スナック真緒」での井口真緒さんと宮田愛萌さんはひらがなメンバーとは別人格という設定ですが、
ここではひらがなメンバーであるのかないのかというのは曖昧にします。
タイトルと冒頭と末尾の文は、宮田愛萌さんがブログで書いているのをテンプレとして使いました。
原案や参照にしたものがある場合には、その小説が完了したとき必ず明記します。
0152名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/02(土) 23:21:41.30ID:CKtR0fQD0
読んでくれた人は、守屋のアンチが書いたと思ったかもしれないが、そうではない。
デビュー前から今まで一貫して守屋は推している。
以前よりは差は縮まったが、今でも握手会での人気は上村>守屋、長沢>守屋である。
上村と長沢は、守屋と同等かそれ以上に押しているので、その人気の理由も十分に分かっているつもりである。
しかし、守屋は間違いなく正統派の美人であり、握手会でのその過小評価が気になっている。
長濱がまだいなかったときには、守屋がビジュアルNO.1と個人的には思っていたので、
ビジュアル以外の要素も大きいのも分かっているが、握手人気がいまだに爆発しないことを不思議に思っている。
その不思議さを表現したくて、ほぼパクリではあるが、書いてみた。
0153名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/03(日) 23:14:26.73ID:2ctLOhTk0
スナック眞緒物語♯5(その1)
カランコロン。
「あら、いらっしゃい」
お店のドアのベルが鳴り、スナック眞緒の店内に眞緒ママの甲高い声が鳴り響く。
入って来た客を見て、愛萌は虫唾が走る。
酔っぱらい客もツケを支払わない客たしかに嫌だが、なんとか許容はできる。
しかし、その客だけは愛萌には受け入れられない。
入って来るなり、「うぃーす、底辺ども、元気かあ」とその客は傍若無人の言動をする。
「なんだ、イケオヤ、『こんな店、もう来ない』って言ってたくせに、また、来たのか」とすでに店内にいた客の一人が応える。
美大生が愛萌のそばまで来て、小声で愛萌に聞く。
「愛萌チャンがあの男の姪っ子というのは本当なの?」(続く)
0154名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/03(日) 23:15:00.57ID:2ctLOhTk0
スナック眞緒物語♯5(その2)
目を皿のようにして愛萌は驚く。
「ち、ち、ちょっと待ってください、そんな噂、どこから出たんですか?」
「噂も何もイケオヤ本人がそう言ってたよ」
「冗談じゃないですよ、そんなことあり得えませんよ」
「そうか、そうか、安心した」
「安心したって?私が否定する今の今まで信じていたんですか?」
「いやね、あいつがあまりにも自信もって変なこと言うからさ」
「変なことって何ですか?まさか私のことで他にも何か言ってんですか?」
「う〜〜ん、知らないほうがいいよ」
「言ってくださいよ!私に関することなら私は知る権利がありますよ!」
「じゃ、言うけども、怒りの矛先をけっして僕に向けないでね」
「わかりました」(続く)
0155名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/03(日) 23:15:40.80ID:2ctLOhTk0
スナック眞緒物語♯5(その3)
テーブル席の一つを指さして、美大生は言う。
「『お前ら、オナニーするとき、愛萌を勝手にオカズにするなよ。愛萌は俺の姪っ子だから、オナペットにするには俺の許可が必要だ』って言ってたよ。
ちょうどいまアイツが飲んでいるあの席で」
「な、な、なんてこと言うんですか!」
「それで、『許可をくれ』と言ったら、どう返すかということを普通思うよね」
「普通、思いませんよ!」
「で、そう言ったら、『俺のツイッターをフォローしろ。それを通じて許可を与える』と答えたね」
「・・・・・・」
「『今フォロワーが9998人いる。お前ら2人が加われば、ちょうど1万人になる』という自慢もしていた」
「あの人、そんなにフォロワーがいるんですか?」
「いや、いや、調べたら、そのときのフォロワー数が実際は8人で、その8人すら減って、今は5人しかいない」
「よくも、まあ・・・・」
「あ、そうだ、こんなことも言ってたな。
『愛萌の趣味が御朱印とはいってもお前らがよくやる手淫を丁寧に言ったご手淫のことじゃないぞ』って」
「も、も、もういいです、それ以上聞きたくありません」(続く)
0156名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/03(日) 23:16:38.06ID:2ctLOhTk0
スナック眞緒物語♯5(その4)
二人のやり取りを聞いていた別の客が口を開く。
「あの人、ここの常連さんっすが、前に会ったことあるんっスが」
「あれ?あんまり見ない顔ですね。このお店初めてですか」と愛萌が訊く。
「ええ、そうっス」
「あの人とどこで会ったんですか」
「コンビニでバイトしているときっスね。全く面識もないのに、いきなり『お前、大学どこだ?』と訊かれたんっスよ。
『慶応ですが…』と答えたら、『学部は?』と言ってきたんで、『総合政策学部です』と答えたら、
『慶応も法学部なら認めてやってもいいが。SFCなんて限りなくFランクに限りなく近い底辺だな』と言ってきたんっスよね。
そこまで人を見下げるということはよっぽどいい大学出てるんっスかね?」
美大生が言う。
「まあ、相当な学歴コンプレックスを抱えているみたいだな。『大学はどこだ?』というのがイケオヤの口癖。
そのくせ人から聞かれてもはっきりとは答えようとはせず、『海外の一流大だ』という曖昧な答しか返ってこない。
アイツが大学ネタを切り出したら、すぐには終わらない。その後も何か言ってなかった?」
「『まあ、底辺でも悲観するな、こういう地味な仕事は、お前ら、底辺の人間が支えなくちゃならない。
社会のためになっていると思えば辛さも吹き飛ぶだろう』とかほざいていましたっスね。
さらには、『ここのコンビニ店員全員まとめても俺の年収勝てないだろ』と勝ち誇っていました」
「そんな常識外れのことを平気で言ったんですか?しかも初対面の人に!サイテイ!」と愛萌は怒りを露わにする。(続く)
0157名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/03(日) 23:18:09.48ID:2ctLOhTk0
スナック眞緒物語♯5(その5)
美大生はおかしくておかしくてたまらない様子だ。
「ほかにイケオヤのエピソードはない?」と笑いながら慶応ボーイに尋ねる。
「やっすい発泡酒と100円ちょいくらいのつまみでイートインで3時間くらい夜は粘っているのをちょくちょく見かけましたね。」
「『夜は』ということは昼間も来ていたことはあるんですか?」と愛萌が訊く。
「ええ、プリンを食べていたときのことはよく覚えてるっスね」
「え?あんな歳の男の人がプリンなんて食べるんですか。しかもあんな誰からも丸見えのところで!」
「それで、突然、『このプリンにはコショーが入っているぞ。店長を呼べ』と怒鳴って、大騒ぎしたんっスね」
「おお、それからどうなった?」と美大生は先を聞きたい様子だ。
「店長が出て来て、『それはバニラビーンズです』と言ったら、一瞬は黙りこくりました」
「で、その次、その次」
「『この俺様が使うコンビニとしてふさわしいかどうかを、お前らがどれだけ商品知識があるのかで試したんだ。
まあ、今日のところは合格ということにしてやる。また試すこともあるかもしれないから、気を抜くなよ』とほざいていたんっスね」
美大生は腹を抱えて大笑いする。
「笑い事じゃないですよ、そのコンビニで働いている人の身にもなってくださいよ」と愛萌は美大生を睨む。(続く)
0158名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/03(日) 23:18:54.29ID:2ctLOhTk0
スナック眞緒物語♯5(その6)
イケオヤが座っているテーブルでは他の客がイケオヤをからかっている。
「おい、イケオヤ、100万のアルマーニのスーツだとか600万円するロレックスの腕時計とかを持っていると言ってるくせに、
着用したことなんか一度も見たことねーぞ。だいたいお前が着けているその腕時計は100均で売ってるやつだろ」
「当たり前だ。逆ドレスコードというのがあるんだよ。こんな場末のスナックに来るときには貧乏くさい格好でやって来るのが礼儀っつうもんだ」
「はい、はい、お前の言い訳はいつも同じだな。ったく、お前の話に素面で付き合うのは無理だから、酒がなくなるのが早いな。
お〜〜い、イケオヤの姪っ子の愛萌チャン、水割りつくってくれ」
「姪っ子」という言葉にはらわたが煮えくり返るが、愛萌は冷静を装ってイケオヤに尋ねる。
「私があなたの姪というのはどういうことなんでしょうか?」(続く)
0159名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/03(日) 23:19:33.36ID:2ctLOhTk0
スナック眞緒物語♯5(その7)
「嬉しいだろ。俺と同じ高貴な血が流れているんだぞ。
さる高貴な血筋のご落胤かもしれないっていう希望が湧いてきただろ」
「いや、高貴だとか何とかだとかはどうでもいいです。私があなたの姪だという証拠を挙げてくださいって言ってるんです!」
「それな、俺のツイッターをフォローしろ。そしたら、そこからその真実を教えてやる」
「なんで、あなたのフォローなんかしなくちゃいけないんですか、嫌ですよ」
「どうしてだ?」
まともに相手にするのも馬鹿らしいと考え直して、愛萌は適当に煙に巻く。
「私は、私に100万円をくれた人の中から抽選で100名様だけをフォローすることにしていますので」
「ヒューッヒュー、いいぞ、いいぞ、愛萌チャン」とイケオヤと同席している客がはやし立てる。
水割りをつくり終えたら、その場からさっさと愛萌は離れる。(続く)
0160名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/03(日) 23:20:09.99ID:2ctLOhTk0
スナック眞緒物語♯5(その8)
「眞緒ママ、あの人、出禁にできないんですか?」と愛萌が訊く。
「まあ、まあ、いいじゃない、みんな楽しんでいるんだから」
見たくもないと思いながらも、どうしてもその方向に愛萌の目は向く。
「だからさ、『メリーポピンズ』なんて映画、屁のようなもんだ。
ああいう映画を観に行くやつなって、馬鹿なディッレタントなんだよ。
お前らの頭じゃキューリックなんて観たこともないだろ。キューリックこそが唯一無二の史上最高の映画監督だ」
さっきの慶応ボーイがイケオヤの傍まで行く。
「誰だ、お前?」とイケオヤが言う。
「覚えていないっスか?以前、あなたに学歴を聞かれたモンっスよ。
映画、詳しいんっスか。俺も好きだから、よかったら話に加えさせてください」
イケオヤは警戒の目つきをするが、「いいぞ、いいぞ、ここに座れ」と同席の男二人は促す。(続く)
0161名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/03(日) 23:21:07.32ID:2ctLOhTk0
スナック眞緒物語♯5(その9)
「キューリックのベストテンを教えてくれませんっスかね」と慶応ボーイはイケオヤに尋ねる。
「えーっと、『博士の異常な愛情』だろ。それに『時計仕掛けのオレンジ』だろ。あとは『2001年宇宙の旅』」
「ベストテンと言ったんっスが、後、7つお願いします」
「なんだ、お前は、その挑戦的な態度は!」
「いや、だって、『唯一無二の史上最高』って言ってたんじゃないっスか。
そこまで思い入れが強いのなら、殆ど全てを観ているんっスよね。10個くらい容易く挙げられるでしょ」
「俺は、なあ、字幕付きの映画は観ない主義だから。邦題はその3」つ以外は覚えていない」
「英語の原タイトルでもいいっスよ」
「・・・・・」
「あれ、どうしたんっすか?じゃあ、質問、変えましょうか?
Why was Dr. Strangelove trying to attack the Soviet Union, although the American home country was not attacked?」(続く)
0162名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/03(日) 23:21:50.79ID:2ctLOhTk0
スナック眞緒物語♯5(その10)
「うるさい、黙れ、俺は一流の外資で働いていて、明日、取引があるんだ。
ネイティブの英語に慣れている俺の耳が、お前の下手くそな発音で狂って、数億ドルの取引に失敗したら、どう責任取るんだ!」
「あなたのさっきの『ディッレタント』という発音がネイティブとも思えないっスね。
それに『ディッレタント』という意味は分かっています?『専門家ではないが芸術を愛する人』という意味っスよ。
『メリーポピンズ』の客層はどう見てもエンタメを求めているだけで、ディッレタントからはかなりずれているっスね。
『馬鹿なディッレタント』というのはキューブリックの映画を金科玉条のように礼賛するような人のことを言うんっスよ」
「何だと、お前、キューブリックがたいしたことないと言うのか!」
「いえ、いえ、優れた映画監督の一人であるとは思っているっスよ。けど唯一無二じゃない。
でも、キューブリックヲタには多いんっスよね。その名前さえ出しておけば、マウンティングできると信じているのが。
You are such a dead beat!
じゃあ、紙とペン、取ってきますね。筆談での英語なら、俺の下手な発音で、耳を狂わされることもないっしょ」(続く)
0163名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/03(日) 23:22:34.24ID:2ctLOhTk0
スナック眞緒物語♯5(その11)
様子を見ていた美大生は自分の鞄から紙とペンを取り出して、慶応ボーイに受け渡そうとするときに尋ねる。
「dead beatってどういい意味なのかな?」
「スラングなんスけど、人間の屑という意味っス」
愛萌が紙とペンを取り上げる。
「お願いだから止めてね。あの人を言葉でフルボッコにして黙らせるつもりなんだろうけど、そりゃ無理よ」
「え!?負ける気が全くしないんっスけど」
「愛萌チャン、止めるなよ、これから面白くなりそうなんだし」と美大生が言う。
「たしかに負けはしないと思いますが、勝ちもしないですね」
「どういうことっスか?」
「この前の深夜、あの人は言い争いをやってましたね。
同席していたサラリーマンの人に、口喧嘩を吹っ掛けたんですよね。
『底辺のお前ら行くような食べ放題専門の貧乏臭い焼き肉屋ではなく、俺は西麻布の高級店でA5ランクの焼き肉しか食わない』って言い始めたのが口喧嘩の切っ掛けでした」(続く)
0164名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/03(日) 23:23:18.04ID:2ctLOhTk0
スナック眞緒物語♯5(その12)
「そんな面白そうなこともあったのか、その現場にいたかったな。愛萌チャン、続き、続き」と美大生は急かす。
「で、サラリーマンの人は嘲笑しながらそれに応戦しましたね。
『A、B、Cというのは牛一頭から獲れる肉の量で、ようは歩留まりのことというのも知らないのか。
飲食店側では重要だが、客にとっては全く関係ない。
5、4、3、2、1というのはサシの油の量を基本的には表している。
5まで行くと油の量が多すぎて味が台無しになるということで使わない高級店も今は多い。
色や光沢なんかも関係するが、あくまで見た目はどうかということで飲食店側にはアピールポイントになるが、味には関係ない。
A5というのを飲食店側が重宝する間に、いつの間にか直接には関係ない客もその価値観に乗せられているだけ。
西麻布の焼肉高級店に足繁く通うというのもどうせ嘘なんだろうが、仮に本当だとしてもお前はただの馬鹿。
世間に流通している意見に付和雷同するだけで、自分の頭では考えることのできない盆暗。
お前のような阿呆に人様に対しあれこれ言う資格はないね』」
「おお、いいね、いいね、そのリーマン。で、イケオヤはなんて言い返したの?」と美大生は目を輝かす。(続く)
0165名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/03(日) 23:24:42.06ID:2ctLOhTk0
スナック眞緒物語♯5(その13)
「たぶん何も言い返せないだろうなと思って、見てはいけないものを見るようにあの人の顔を私はそっと見ました。
ところが、何の恥じる様子もなく、
『俺が乗っている車はアストンマーチンだぞ、お前のような底辺には一生手が届かんだろ』と唐突に言い始めましたね」
「なんっスか?それ?」
「イケオヤがよく使う手だね、自分に都合が悪くなったら、今までの話の流れを無視して関係ないことを突然言い始めるだな、これが。
羞恥心というものが完全に欠落しているイケオヤの必殺技だな。
その後、リーマンはどう返したの」と美大生が言う。
「一瞬、きょとんとした顔をしましたが、気を取り直して、『アストンマーチンの車種は?価格は?年代は?』とまくし立てました。
そしたら、また、話の流れをぶった切って、関係ないことをあの人はは話し始めました。その後もその繰り返しです、何度も」
「うわ〜。まるでマグナム弾を何発も頭に食らっても立ち上がるゾンビと一緒っスね」(続く)
0166名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/03(日) 23:25:14.88ID:2ctLOhTk0
スナック眞緒物語♯5(その14)
「サラリーマンの人も『お前のような奴は徹底的にぶちのめさないと気が済まんから、朝までやるぞ』と最初は言ってたんですけど、
眞緒ママや私がもう閉店したいという気持ちを察知して、あきらめて席を立ってお店から出て行きました」
美大生は笑い転げながら言う。
「その後のイケオヤの言動を当ててやろうか。『逃げた』と勝利宣言したんじゃない?」
「当たりです」
「なるほど、止められた訳がわかったっス。俺も今日はもう帰りますね」
「うん、うん、それがいいですよ」と愛萌は慶応ボーイを見送る。(続く)
0167名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/03(日) 23:25:53.92ID:2ctLOhTk0
スナック眞緒物語♯5(その15)
イケオヤが奇声を発する。
「おい、さっきの奴はどこ行ったんだ」
「お帰りになられましたけど」と愛萌が答える。
「そうか、そうか、俺に怖気づいて逃げていったんだな」とイケオヤは満足そうだ。
「それは良かったですね」と愛萌が無表情で言う。
「馬鹿を一匹で期待したので、今日は俺も帰るとするか。では、底辺ども、アディオス!」と言って、イケオヤは店を出て行く。
愛萌はほっとする。
しかし、「また、いらしてね」という眞緒ママの言葉を聞き、自分の耳を疑う。
すぐその後に、「あら、いらっしゃい」の眞緒ママの甲高い声が鳴り響く。
イケオヤと入れ替わり、別の客が入って来たのだった。
酔っぱらって、愛萌によくからむ客だ。(続く)
0168名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/03(日) 23:26:29.51ID:2ctLOhTk0
スナック眞緒物語♯5(その16)
また面倒なことになりそうだと思って愛萌はそっと離れようとするが、呼び止められる。
「おい、オメー、ここをさっき出て行ったのはイケオヤじゃねえのか?」
「え?あの人を知っているんですか?」と愛萌が驚く。
「知ってるも何もアイツと同じところに住んでいるよ」
「たしか南青山の高級マンションでしたよね」と美大生が皮肉交じりに言う。
「馬鹿言え、そんなことあるか。自慢じゃないけど、風呂なし便所と流しが共同の築50年の木造アパートの四畳半だ。
まあ、済めば都というけどな、ガッハッハッハ」(続く)
0169名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/03(日) 23:27:30.14ID:2ctLOhTk0
スナック眞緒物語♯5(その17)
イケオヤが出て行ってほっとしたのか、愛萌にどっと疲れがやって来る。
「どうしたんだ?オメー、辛気臭い顔しやがって」
「愛萌チャンはイケオヤが大嫌いなんだ」と美大生が代わりに答える。
「まあ、そう言うなって。アイツにだって、優しく良識的なところもあるんだぜ」
「え?そうなの?」と美大生が興味津々で尋ねる。
「朝早いときで住んでいるアパートの前だった。アイツが彼女と別れる現場に出くわした。
泣きながら、何度も、『ゴメンね、ゴメンね』と言ってた」
「え?あんな人に彼女なんているんですか?しかも、そういう状況ということはあの人のほうが振ったんですか?」と愛萌は驚く。
「まあ、人から捨てられた彼女を拾って自分のものにしたんだけどな」
「それが優しいところという訳か。でも、良識的というのはどういうこと?」と美大生が尋ねる。
「俺のアパートの前にはよう、ゴミ回収場となっていて、その日は燃えないゴミの日だったつうわけだ」(続く)
0170名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/03(日) 23:28:15.01ID:2ctLOhTk0
スナック眞緒物語♯5(その18)
話が全く見えず、愛萌はきょとんとしている。
しばし、考え込んでいた美大生が、突然、大声で笑い出しながら言う。
「なるほど、なるほど、その“彼女”というのは『愛のお人形』ということか!」
「うひゃ、うひゃ、『愛のお人形』か。そりゃ、またオツな言い回しだな」
愛萌には二人のやり取りが何のことか分からない。
美大生は腹がよじれるほど笑っていて、かろうじて声を振り絞る。
「でも、なんで、その“彼女”が他の人から捨てられたというのが分かった?」
「そりゃ、まあ、オメー、あれよ、拾ったのも同じ場所だったんだな。
でも、俺は良識がないから、生ゴミの日だったんだな」
美大生は立つのがやっとというくらい大笑いするが、愛萌は置き去りにされている。
「なるほど、なるほど、あなたとイケオヤは“兄弟”というわけか」
探求心の強い愛萌ではあるが、知ってしまうと何か自分が穢されるような危険を直感して、理解しようとするのをやめる。(続く)
0171名無しって、書けない?(東京都)
垢版 |
2019/03/03(日) 23:28:49.01ID:2ctLOhTk0
スナック眞緒物語♯5(その19)
二人から離れ、眞緒ママのところまで行き、愛萌は抗議する。
「なんで、さっき、あの人の帰り際に、『また、いらしてね』なんて言ったんですか?」
「ここは誰でも受け入れるスナックよ。お客様は大切よ」
「でも、あの人、自分の姪だと私のことを吹聴してるんですよ!」
「そんなに気にすることかしら。誰も信じちゃいないわ」
「あの人が来るとお店の雰囲気が悪くなりません?」
「楽しんでる人もいるじゃない」
「楽しんでる?あの人を馬鹿にして嗤っているだけですよ」
「それが楽しんでるってことじゃない」
「それに不快に思っている人のほうが多いですよ、絶対に」
「不快ということだけで出入り禁止にはできないわ」
「でも、あの人が来ると、不幸のどん底に引き入れられるような気がして・・・・、もっと良質で幸せそうなお客さんのほうが私はいいな」
「たしかに、幸せな人には、ここにきてもっと幸せになってほしい。
でもね、愛萌、私はね、不幸な人の心こそ救済してあげたいのよ」
「え!?ここは福祉施設なんですか?」
「いいえ、天国でありたいと思っているわ。
『心貧しき人は幸いである。天国は彼らのものである』と聖書にもあるわ。
このスナックの中の光でああいう人の内面をも照らしてあげたいのよ。お願い、愛萌、分かって」
愛萌は自分の不明を恥じ、大きくうなずく。
やっぱり眞緒ママには叶わないなと愛萌は思う。
今日もスナック眞緒は大繁盛♪(了)
0172名無しって、書けない?(庭)
垢版 |
2019/03/04(月) 00:15:01.83ID:ijUb1rqMa
イケオヤワロタw
0175名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/05(火) 23:13:28.36ID:wvvXP50T0
ラスト・ステップ(その1)
パシフィコ横浜で行われている欅坂46の個別握手会で、上村莉奈のレーンの列に並んで順番を待っていたときのことだった。
突然、怒鳴り声が聞こえた。
「なあ、なぜブログ更新しないんだ?」
「すみませんね、でも私にもいろいろ都合があるんです」と平静を装いながらも答えるが、上村の顔は引きつっている。
自分の言葉に興奮してさらに大きな声でその男は怒鳴る。
「すみませんじゃねえだろ。ブログも更新しないようなら、さっさと辞めろ。そういえばまだ謝罪もしてなかったな、このナチスが」
上村は下唇をプルプル震わせ今にも泣きださんばかりだが、涙の決壊を押しとどめ、気丈にもその輩をにらみつける。
止めようと足を踏み出したその刹那、係員二人に両腕を押さえつけられ、その男は連れて行かれた。
気づいたら、その後を追うように俺の身体は反応していた。
男は会場の外に放り出された。
このままじゃ腹の虫が治まらない、因縁ふっかけてアイツをぶん殴ってやろう。
ただ、警察沙汰になったとき、何が原因かというのが判明すれば上村に迷惑が掛かってしまう。
そうだ、特定されないように、会場から離れたところで実行しよう。
上村との握手をやめるのは惜しいが、その男を尾行することにした。(続く)
0176名無しって、書けない?(東京都)
垢版 |
2019/03/06(水) 23:27:05.82ID:d+g6jPOV0
ラスト・ステップ(その2)
デイリーヤマザキでパンを買った後に、駅とは逆の海際の南口広場のほうに奴は向かった。
11月下旬の17時過ぎということもあって外は暗くなっていた。
風も強く、冷え切っていた。
途中、買い物袋を落として、奴は後ろを振り向いたが、視線はその落とし物に向いて、こちらには気づいていないようだ。
街灯がぼんやりとともる広場を通り抜け、コンクリートの段の最下部の水際に向かって降りている。
しめた、おそらく下には誰もいない。
間を詰めるように俺は急ぎ脚となった。
一番下まで降りる途中で、こちらを振り向いて睨みつけてから男は言った。
「おい、アンタ、さっきから付けているみたいだが、なんか用か?」
さらに上着のポケットからスマホを取り出して、「暴力ふるうつもりなら、今すぐ警察に通報するぞ」と喚いた。
まずい、ばれてたのか。ポリ袋はわざと落として、尾行を確認したのか。
それにしても、情けない奴だ。あんな無法なことやらかして、いざ自分がやられそうになれば、警察の庇護を受けようとするとは。
原因が特定されてしまうから、殴りつけるわけにはいかなくなったか。
どうするか?
とりあえず奴の出方を探ってみるか。(続く)
0177名無しって、書けない?(茸)
垢版 |
2019/03/07(木) 15:26:57.11ID:nPNjlMfzd
なにこれ
0178名無しって、書けない?(東京都)
垢版 |
2019/03/07(木) 23:55:53.19ID:oIevx70D0
はあ・・・、青天の霹靂とはこのことだな。
ショックで加筆修正したものを挙げる気すら起きない。

欅坂を卒業するだけなら、その門出を祝って、主人公にした物語をぜひ書きたいところだが、
芸能界からの完全引退であるなら、心の中だけで留めてほしいと思っているだろう。
はっきりするまで、一切触れないでおこう。
0179名無しって、書けない?(庭)
垢版 |
2019/03/08(金) 18:57:01.95ID:2m7EBw6ma
ショック過ぎますよ
0180名無しって、書けない?(東京都)
垢版 |
2019/03/08(金) 22:11:56.66ID:hv+3r8/D0
いずれは誰もが卒業することにはなるんだけど、突然すぎますね。
それと、あれだけの功労者への運営の対応が不可解ですね。
本人のブログでの報告から一日経つというのに、HPでのニュースでなぜ言及しないのか?
0181名無しって、書けない?(庭)
垢版 |
2019/03/08(金) 23:51:14.29ID:m2hJYsVSa
すんなりな卒業じゃないのかと憶測しちゃいますよね
0182名無しって、書けない?(広西チワン族自治区)
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2019/03/09(土) 10:15:49.74ID:ca0/5OL6K
ずみこ、米さん、そしてねる…
かつて小説スレで自分がよく題材にしていたメンバーが順々に辞めていくのを見て
次はやっぱりすずもんなのかなあと気にしています
0183名無しって、書けない?(庭)
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2019/03/09(土) 12:22:18.00ID:3TECKGDMa
>>182
言われてみれば・・・

なかなかのサゲチンですなw
0184名無しって、書けない?(広西チワン族自治区)
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2019/03/09(土) 12:52:57.17ID:ca0/5OL6K
>>183
そもそも自分が欅板に進出したあたりから欅坂全体がなんだか・・・になってきましたしね(笑)

庭先生のおかげで理佐ちゃんとゆいぽんをほとんど書いてなかったのが
不幸中の幸いかも(笑)
0185名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/09(土) 22:42:53.60ID:p9r/OEqC0
>>181
HPのニュースでの告知はありましたね。
ただ、今日の全握は23時過ぎるそうです。
卒業が決まっているのに馬車馬のように働かされて何かかわいそうになりますね。
0186名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/09(土) 22:46:53.01ID:p9r/OEqC0
今日、録り溜めしていたラジオ番組「ジュグラーの波」を聞いて、衛藤美彩も卒業するのを知りました。
乃木坂に対してはかろうじて残っていた興味関心が衛藤卒業で完全に切れてしまったという感じかな。
欅坂に関しては、長濱がいなくなった後でも完全に切れてしまうことはないだろうけど、どんどんフェードアウトしそうな気がする。
そうなると、日向坂があることが唯一の救いになるな。
それも含めて長濱にはホントに感謝したいですね。
0187名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/09(土) 22:48:45.99ID:p9r/OEqC0
>>182
運営は絶対に鈴本は手放なさないでしょう。
回復傾向にあるとはいえ平手がまだ安泰というわけではない。
平手のスーパーサブは鈴本しかいないと個人的には思っています。
0188名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/09(土) 22:53:31.99ID:p9r/OEqC0
しかし、鈴本の握手人気がなぜイマイチなのかがよくわからない。
ダンスは欅では群を抜いている。
ちょっと太目なのも含めてルックスは間違いなく可愛い。
料理の腕も確かでガール度は高い。
そして、意外だったのが、8thのPV「KEYAKI HOUSE」でのあの気さくで開放的な性格。
なぜかこのときにはネグされていた長濱やずっと孤立しているという噂のあった平手に対し、
鈴本一人だけが積極的にコミュニケーションを取っていた。
あの胸アツとなる大団円は、紐帯となった鈴本のおかげですね。
0189名無しって、書けない?(庭)
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2019/03/10(日) 16:45:28.95ID:YQ2JV6xFa
>>184
結果的にチワンさんのサゲチンから理佐ちゃんを守れたんですねw

>>185
人を人とも思わないとこのある運営ですからね・・・
0190名無しって、書けない?(庭)
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2019/03/10(日) 16:47:48.65ID:YQ2JV6xFa
>>188
俺ももんちゃん好きだから不思議なんですよね
初期の頃の塩対応が多いという噂が尾を引いているんですかね
0191名無しって、書けない?(広西チワン族自治区)
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2019/03/10(日) 17:53:46.18ID:xbft6ZNIK
自分の印象ではすずもんは人見知りの内弁慶が服着て歩いてるような対人関係に不器用なタイプなので
握手会に気さくさやあざとさばかりを求めて
それができないと塩だと叩くようなヲタが多いからじゃないですかね

本人というよりはヲタの質の問題かと在宅の自分は思います(笑)
0192名無しって、書けない?(庭)
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2019/03/10(日) 18:03:02.46ID:YQ2JV6xFa
>>191
まさにそれですね😃
0193名無しって、書けない?(庭)
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2019/03/10(日) 18:03:44.97ID:YQ2JV6xFa
Twitterの癖で絵文字つけたなゃったw
0194名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/10(日) 23:31:14.66ID:/5usc8Vu0
そのカラーの絵文字ってコピペできるんですか?
試してみるか。😃
0195名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/10(日) 23:31:35.82ID:/5usc8Vu0
ああ、できるんだ。
0196名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/10(日) 23:32:29.67ID:/5usc8Vu0
では、板違いになるけど、乃木坂との決別のため、今日、一日中、書いていたものを投稿。
0197名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/10(日) 23:33:30.43ID:/5usc8Vu0
深夜航路(その1)
やっと高知県宿毛港のフェリー待合所についた。
待合所は小さなプレハブ。もうちょっとで日付が変わる。
「0時30分発でしたよね」と言いながら、切符売り場で2等室の運賃2,750円を支払う。
桟橋の先端まで行って、船の到着を待つ。俺以外に人はいない。
真っ暗な沖合から一隻の船が音もなく近づいてくる。
大分県佐伯港行きのフェリー「ニューあしずり」はゆっくりと接岸する。
船首にあるドアが大きく口を開け、搭乗橋が岸壁に渡される。
車両甲板からは徒歩客3名が降りてきた。
続いて、トラックや乗用車の計6台が船から吐き出される。
係員に誘導されて、船首の車両甲板から乗り込む。
「孤独な旅ですね」
「え?」と何のことかわからず俺は戸惑う。
理由を聞くと、乗船するのは俺一人で、しかも徒歩客だけでなく、車両客もいなしらしい。
「今日は強い霧が予測されます。甲板に出るときにはお気をつけて」(続く)
0198名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/10(日) 23:33:58.82ID:/5usc8Vu0
深夜航路(その2)
雑魚寝仕様の二等室は広く、その中はがらーんとしている。
扉が透明なボックスがコインロッカーのように壁には並んでいる。
その中にはロール状になった毛布が入っている。
「料金100円」とあるが、コインの投入口が見当たらない。
と、思ったら、そのボックスの一つがベニヤ板で封じ込められて投入口がある。
自主的に入れる仕様だ。
この広い空間を一人で占有する罪悪感もあって、せめてもと思い、500円玉を入れて、毛布を取り出す。
この船に客は俺一人か、だったら奇跡が起こるかもしれないなと妄想しながら、部屋の真ん中に毛布を敷く。
手足を思い切り伸ばして大の字で仰向けになる。
ここのところずっと不眠症だ。
このまま眠りにつけたらいいのに・・・。
平謝りする相手に怒鳴りつけるシーンや殴り合いをするシーンがフラッシュバックし、自己嫌悪に落ちて、あわてて体を起こす。
外の空気を吸いに、甲板に出てみるか。(続く)
0199名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/10(日) 23:34:39.69ID:/5usc8Vu0
深夜航路(その3)
係員の予測通り、海面から湯気のような白い煙が立ち上り、船の甲板は深い霧に包まれている。
船の進行方向と逆側を見ると、宿毛のまばらな街灯が霧の中にぼーっと浮かぶ。
その灯もゆっくりと遠ざかると、やがて船の上は闇に包まれる。
真っ暗な上に霧がまとわりついていて、何も見えない。
自分の心の深部を覗くこと以外には。
首が切断された鴨の死体の光景がフラッシュバックし、思わず俺は嗚咽した。
崩れ落ちた両膝は甲板に着き、体の震えが止まらない。
そういう状態が1時間以上は続いただろうか?
闇の中から、「大丈夫ですか?」という声が聞こえる。
若い女性の声だ。
幻聴か、と自分自身を嘲笑う。
だが、もう一度、「大丈夫ですか?」という声が聞こえる。
幻聴ではないな、だが、客は俺一人のはず、だったら女性の乗組員か?
「すみません。でも、入水自殺しようと思っていたわけではありませんから心配しないでください。
こんな深夜勤務の乗組員さんによけいな迷惑をかけてしまいましたね」(続く)
0200名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/10(日) 23:35:14.55ID:/5usc8Vu0
深夜航路(その4)
警戒しているのか?しばし何の言葉も返ってこない。
1分ほど経って、「いいえ、乗組員さんではなく私も乗客ですよ」という声が暗闇の霧の中から聞こえる。
「あれ?たしか客は一人だけだと言われたんだけど」
「ええ、その後に私は乗ったんですね。予約も入れてなかったから、あなたが乗り込んだときにはきっとそう思われたんですね」
「あなたの客室は一等室ですか?だから、顔を合わせることはなかったのか」
「あら、急に霧がなくなりましたね。どうしてかしら?」
その言葉に促され周りを見渡すと、いつの間にか霧はだいぶ薄くなっていて、月が甲板を照らしている。
「海面と大気の温度差があると、暖かい海面から蒸発した水蒸気が冷気に冷やされて霧になります。
おそらく寒流が入り込んで、海が冷えたのでしょう」
「なるほど、そういうことですか」と言うその女の顔を見て、俺は驚く。(続く)
0201名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/10(日) 23:35:57.24ID:/5usc8Vu0
深夜航路(その5)
月明かりに煌々と照らされて衛藤美彩が立っている。
いったいこれは現実なのか幻なのか?
現実だとすれば、どういう対応をすればいいのか?
俺は途方に暮れる。
ただ、奇跡が起こったのは確かである。
「幸せのきっぷ」という絵本がある。
回送列車のような誰もいない列車に一人で乗ったら、奇跡が起こるという物語である。
誰もいない船でもそれは起こった!
俺はもう胸が一杯だった。
さりげなくこの場から離れよう。(続く)
0202名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/10(日) 23:36:36.58ID:/5usc8Vu0
深夜航路(その6)
「若い女性が一人でこんな深夜の船旅をするというのは何か事情がおありなんですね。
安心してください。女性が一人であることに付けこむようなことはしませんから。じゃあ、俺は客室に戻ります」
冷静を装ったつもりだったが、かなりの早口になっていた。
「うふふふ。いい人そうで安心しました。実は、私、知られてもらえてないでしょうけど、一応は芸能人なんですよ。
私のファンの方っていい人が多いのですが、一人だけ困った人がいて、今日、ストーカーされたんです。
四国でお仕事があって、飛行機で東京に戻るときストーカー被害を恐れて、
この航路のことを思い出し、いったん私の生まれ故郷の大分に戻り、そこから東京に戻ろうと考えたんですよ」
「かなりの遠回りですよね。そのストーカーを巻くにしてももっと楽な経路もあったんじゃないですか?」
「ええ、仰る通りです。でも、もう一つ目的があって・・・。あ!あれですよ、あれ」(続く)
0203名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/10(日) 23:37:12.31ID:/5usc8Vu0
深夜航路(その7)
美彩が指さした方向を見ると遠くの灯台の光が暗闇に浮かび上がる。右舷の方向だ。
その光を美彩は凝視する。
美彩の目から涙がこぼれる。灯台の光に照らされて頬を伝って落ちる涙はまるで流れ星のようだ。
涙の理由を尋ねるかどうかをためらっていると、美彩のほうから口を開く。
「なぜ何も訊いてくれないのよ。訳もなく突然に泣き出した私は馬鹿みたいじゃないですか」
「訊きたくてうずうずしていました。ただ、あの灯台がある岩礁近くでの事故で身内の方がお亡くなりになったのかとも思って・・。
でも、そういうわけではないみたいですね。だったら、ぜひ教えてください」(続く)
0204名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/10(日) 23:37:55.42ID:/5usc8Vu0
深夜航路(その8)
「あの灯台のある岩礁は『水ノ子島』という名前なんですね。
子供のころ、父や兄と一緒に漁船をチャーターして上陸したことがあるの。
島とも呼べないほどとても小さくて半径が50メートルほどしかなく、しかもごつごつしていて平らなところは殆どなかった。
そのときには何とも思わなかったですけど、その後で、水ノ子島についての新聞の記事をたまたま読みました。
読んだそのときにはすでに太陽光発電で全システムが自動化されてはいたんですけど、
私が生まれる7年前くらいまでは灯台守の人が一週間交代で勤務していたそうなんです。
無限の時間が流れていたまだ幼い私にとって一週間もあんな何もない場所で一人でいることの侘しさというのは想像を絶するものでした。
座礁しないように船のほうもあの光を頼りに安全を確保していたんでしょうけど、
灯台守の人にとっても時おり通る船の灯は寂しさを紛らしてくれていたんじゃないかと想像しました。
そして、近くを通ったときには叫んで励ましてやりたいという衝動にかられました。
まだ生まれてはいなかったんですけどね」と美彩はペロっと舌を出した。(続く)
0205名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/10(日) 23:38:45.98ID:/5usc8Vu0
深夜航路(その9)
息を大きく吸い込んだかと思うと、夜の空気を切り裂くような大声で美彩は叫んだ。
「ありがとうございます。あなたのおかげで事故が起きることがなく今日も安全に運行しています!」
その様子に心の底から感動し、俺の体は小刻みに震えた。
「あなたが一緒にいてくれてよかった。一人じゃ恥ずかしくてとてもこんな大声は出せなかった」と恥ずかし気に言う。
美彩の叫びの余韻を噛みしめるように俺は黙ってしまった。
「でも、届くわけもないのに馬鹿みたいですよね」
「その優しい思いやりが時空を歪めて、時間を遡って、灯台守の人にきっと聞こえましたよ」
「うふふふ、やっぱりあなたはいい人ね。じゃあ、今度はあなたが話す番よ」
「え?」
「『え?』じゃないでしょ。なんで、さっきあんなに苦しそうにむせび泣いていたの?じゃあ、話を聞きましょうか」
「そこは『話を聞こうか』と言ってほしかったですね」
「私のことご存知だったんですね。いつ気づいていたんですか?」
「霧が晴れて、月明かりが出て顔が見えたときにはすぐに。ずっとファンです。もちろん写真集は買いました」
「うわ〜、嬉しいわ。でも、誤魔化されませんよ。
私のほうは全部さらけ出したんだから、今度はあなたの涙の訳を話してくださいよ」(続く)
0206名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/10(日) 23:39:41.89ID:/5usc8Vu0
深夜航路(その10)
「10年ほど勤めていた会社に嫌気がさして辞めました」
「どうしてなんですか?」
「はっきりとした形で実績を積み重ねているのに会社の側が評価を全くしてくれなかったんです」
何も言わずに、美彩は凝視する。
「こちらの勝手な思い込みかもしれませんが、美彩さんのファンになったのもそのことが関係していました。
大量の銀貨の中に一枚の金貨があれば目立つように、美女ぞろいの乃木坂の中でも美彩さんのビジュアルとオーラは目立っていました。
ただし、それ以上でも以下でもありませんでした。
でも、8目シングルでアンダーに落とされたときに激しく憤りました。
握手人気では完全に選抜圏なのに、なぜ?と。
握手会人気だけで序列を決めるのは戦略的に誤っているというのはその通りですが、
美彩さんの場合には、歌、ダンスともにうまく、さらにミスマガGPという肩書もありました。
また、長時間にわたり窮屈な拘束を受けるため誰も行きたがらない地方イベントにも参加されていましたよね。
後輩の二期生にも見本となっていました。
なのに理不尽に干されているという状況を自分に重ね合わせて切実に受け取っていたのかもしれません」(続く)
0207名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/10(日) 23:40:34.24ID:/5usc8Vu0
深夜航路(その11)
眉ひとつ動かさず、真っ直ぐにその眼差しを美彩はこちらに向けている。静かに口を開く。
「私が干されていたというのを判断なされたのは8thシングルでのアンダー落ち以外でも何かありますか?」
「選抜常連となった後でもフロントの回数が極端に少ないですね、その人気と実力に比べると。
それに公式ブログが美彩さんの仕事は徹底的に告知しませんでしたよね」
「どういう理由であれ、そこまで私のことを思ってもらえるなんてありがたいです。
でも、私は干されていたとは思っていません。というか、干されていたかなんて考える余裕もなかった。とにかく必死でした。
6thのアンダーの頃でしたか、初めて乃木坂が神宮球場でツアーをしたとき、
橋本奈々未チャンが急にツアーに出れないというときに、直前に代わりをマネージャーから頼まれました。
『ガルル』と『世界で一番孤独なラバー』しかやったことはなかったのだけど、『出れます』と大見えを切ったんですよ。
ピンチはチャンスというのはちょっと違うかもしれないけど、そのくらい必死に這い上がることしか考えてなかった」(続く)
0208名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/10(日) 23:41:12.52ID:/5usc8Vu0
深夜航路(その12)
「そうだったんですか。じゃあ、乃木坂の卒業も運営に愛想をつかして、というわけではないんですね」
「ええ、そうですよ。う〜ん、決意した理由を話そうかな、でも、己惚れていると思われたくないしなあ。まあ、いいか、話します!
乃木坂の中で心を震わせたり、期待に胸がはずむようなことがなくなったの。
すでに色あせた当たり前のことにしか見えなくなった。試さなければならないものは乃木坂の中にはもう見当たらない。
まだ見ぬ私の新たなる姿を求めて、まだ私の力の試されていない外の世界を見てみたいと思ったの」
「かっこいいですね」
「やめてくださいよお。暗くてよく見えないかもしれないけど、私、今、顔、真っ赤。言ったそばから、もう後悔してる」
美彩のポジティブな姿勢に俺は恥ずかしくなった。
「理不尽に干されているという状況を自分に重ね合わせて切実に受け取っていた」とお仕着せがましく語ってしたことに対して。
後悔しなければならないのは俺のほうだ。(続く)
0209名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/10(日) 23:42:18.24ID:/5usc8Vu0
深夜航路(その13)
「じゃあ、今度こそ客室に戻りますね」と俺は切り出した。
恥ずかしさで美彩と顔を合わせられなくなったからだ。
「ちょっと待ってくださいよ。あなたのお話は全部聞いていませんよ。
二つほど訊きたいことがあります。それを聞き終えたら、んがしてあげますからね。
一つは我慢して会社に残り続けるという選択肢はなかったのですか?もう一つは、なぜ、あなたがその会社で干されたのですか?」
「その会社は窓際族になっても待遇はいいんですよね。我慢しようと努力はしました。
でも、会社で受けた恨みを他で鬱憤晴らしするようになりました。
量販店なんかで対応が気に食わないと怒鳴りつけたり、駅とかでささいなことが原因で殴り合いの喧嘩になったり。
このままじゃ、人間としてダメになると思って、辞めるのを決意したというわけです」(続く)
0210名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/10(日) 23:42:45.02ID:/5usc8Vu0
深夜航路(その14)
「辞めた訳はわかりました。では、会社で干されたのはなぜですか?」
「はっきりとした裏付けはとっていないのですが・・・」
「でも、あなたは確信なさっている。それでいいので話してください」
「勤めていたのは商社で、そこのグループ企業には銀行もあります。
ある宗教団体のメインバンクがその銀行となっています。
人事部や上層部にその宗教団体の信者がいるのは世間一般にも知られている話です。
また、トラブルを起こした人に対し、その宗教団体はストーカーや嫌がらせ行為をしていることもよく知られている話です。
その商社全体がその宗教団体の手に落ちているというわけではありませんが、信者が暗躍していましたね。
俺のことを『仏敵』と呼び、根も葉もない悪い噂やネガティブな評価の出どころがそういう信者によるものだというのは調べ上げました」(続く)
0211名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/10(日) 23:43:14.62ID:/5usc8Vu0
深夜航路(その15)
「なぜ、あなたはその宗教団体から恨みを買っていたのですか?」
「大学生のときでした。その宗教団体を脱会しようとしていた知人を助けるためにそこの集会所に一人で潜入したことがあります。
全員で題目を唱えるのが終わったら、俺以外の全員は部屋の壁を背にするように周囲にさっと移動しました。
俺だけが部屋の真ん中に取り残され、全員から取り囲まれました。
幹部らしき男が大得意で底の浅い話をし始めましたが、様子見だけが目的だったので、反論はしないように努めていました。
勧誘数やお布施の額が鈍っていることを信者全員に対し文句を垂れた後に、
障害者の子供があることで悩んでいるという女性信者を指さして、とんでもないことを言い始めました。
『輪廻転生した悪人が生まれ変わって因果応報を受けたのが障害者だ。だが、功徳を積むことでその悪縁を断ち切ることができる』
そして、その功徳というのが勧誘活動を熱心にやることやお布施をなるべく多くするということであると主張し始めました」
「え!そんな宗教団体って本当にあるんですね。信じらんない!」と美彩は驚く。(続く)
0212名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/10(日) 23:43:44.64ID:/5usc8Vu0
深夜航路(その16)
「吐き気にも似た怒りが込み上がりましたが、その女性のことを考えて黙っていました。
障害者を抱えている親というのは果てしない罪悪感を抱えているだろうし、
その宗教に救いを求めているのなら、ここでかき乱す必要はないと思ったからです」
「でも、あなたは黙っていられなかった」
「その女性が介護のために途中で退場したので、それを機にねじ伏せてやると思いました。
『地球に人が誕生して以来、人口は増え続けている。だったら、その増えた分の人の前世は何だったのかな?』とまず探りを入れました。
そしたら獣や鳥や魚や虫とかも考えないといけない、増えた分の人の前世はそういう類のものだというように返してきたので、
『生命が地球上に誕生してからずっと人とその他の生物の合計数は常に一定なのか』と責めたら、黙りこくりましたね」(続く)
0213名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/10(日) 23:44:38.30ID:/5usc8Vu0
深夜航路(その17)
「なるほど、そういう考え方をすれば、輪廻転生なんてあり得ないわけですね」
「その直後に、『釈迦も日蓮も輪廻転生があると断言している』と医者をしているという男が話しに割り込んできたので、
『日蓮は知らんが、釈迦がそんなことを言うわけがない。
バラモン教や輪廻転生の否定から仏教は始まっている。
自我というのはあるでもなくないでもなく幻のようなものと釈迦は唱えた。そんなものが輪廻転生すると言うわけがない。
たしかに、輪廻転生を教義としている日本の仏教は多い。でもそれは、バラモン教やその他の宗教が混濁している結果であって、
釈迦がそんなことを言うことは絶対にありえない』と一蹴しました」
「うわ〜、何かすごい話になってきましたね。それで医者を名乗るその人は引き下がったんですか?」
「『科学的にも医学的にも輪廻転生の存在は裏付けられている』とトンデモ論で食い下がってきましたね。
女性臨床医で仏教徒でもあったスーザン・ブラックモアという人が書いた『生と死の臨界点』という死後の世界を否定した本があって、
それを引用して、諄々と諭したら、黙ってしまいましたね。
その集会場の中にいた全員が恐れ入ったという顔をしていたので、してやったりとそのときは思いましたね」(続く)
0214名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/10(日) 23:45:18.98ID:/5usc8Vu0
深夜航路(その18)
「まだ話の続きはありますよね。でなければ、あんなにも長い時間むせび泣いていた理由がわからない」
「その宗教団体がどれだけ危険なものかを知らなかったんです。愚かだったですね。
深夜に無言電話がかかってきたり、尾行されたりもしました。
夜、12時を過ぎたら、電話のモジュラージャックを抜いたり、急ぎ足で巻いたりという対策は講じました。
ただ、どうしても悔やみきれないことがあります。
当時、住んでいたアパートの近くに川があり、多くの鴨が泳いでいたんですが、集団から離れていたのが一羽だけいました。
気になって、双眼鏡でその鴨を見て、鳥類図鑑で種類を調べたんですが、該当するのがいなかったんですね。
動物園や博物館に電話でその特徴を問い合わせたら、どうもカルガモとマガモの交雑種じゃないのかという答が返ってきました。
ある日、同じように川べりでその鴨を観察していると、陸に上がって傍まで寄って来ました。
学生当時は金もなく同じ服ばかり着ていましたから、それを覚えられ安心したのかなと思っていました。
でも、それが嬉しくて、暇を見つけては川に行き、手から直接にパンを食べてくれるようにもなりました」(続く)
0215名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/10(日) 23:45:49.15ID:/5usc8Vu0
深夜航路(その19)
「でも・・・」と俺は喉を詰まらせた。
「その鴨に何か異変が起きたのですね」
「その当時、アパートの1階に住んでいました。
暖かくなってきた春先に、換気のため窓を開けていましたが、カーテンは閉めていました。
うとうとしてうつつ寝をしていたとき、切断されたその鴨の首と胴体が投げ入れられました。
しばらく固まってしまって、あわててドアを開け犯人を捕まえようとしましたが、手遅れで逃げ去られました」
「・・・・酷すぎますね・・・・」
「近くの警察署で全てを話し、被害届を出しました。
対応した警察官はもらい泣きして、『絶対に捕まえるから安心してください』とそのときには言ってくれたんだけど、
捜査の進捗状況を聞きに、再び訪れたときには、『いや、もう、諦めたほうがいいんじゃない』という冷淡な態度に変わっていましたね」(続く)
0216名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/10(日) 23:46:24.01ID:/5usc8Vu0
深夜航路(その20)
「なぜなんですか?」
「さあ、分かりません。ただ、その後に、こんなことがありました。
0時前になって、いつものようにモジュラーを抜こうとしたら、電話がかかってきました。
受話器を取ると、『いろいろ嗅ぎまわっているようだな。だが、無駄だ。署長レベルにまでこちらの手は回っている』と卑しい声が聞こえました」
「怖ろしいですね・・・」
「それ以来、他人が悪気を持って自分に相対しているというアンテナを常に立てるようになりました。
そうすると、悪意とは全く無縁であっても、何らしからのひび割れがその他人に見つかるものなんですよ。
そして、会社の中までそのカルトの手がおよんでいることにまで気づくと、不安をかき消すように、そのひび割れを突いて攻撃的になりました。
でも、そんなことよりも一番苦しいのはあの鴨のことです。
俺に懐かなければ、俺以外の者にも近寄ることはなく、殺されずに済んだのに。いつも自分を責め立てています」(続く)
0217名無しって、書けない?(東京都)
垢版 |
2019/03/10(日) 23:47:13.66ID:/5usc8Vu0
深夜航路(その21)
美彩は目に涙を浮かべながら、言ってくれた。
「いいえ、あなたは悪くないわ。あなたの尊厳は決して傷つけられていない」
その言葉を聞いて、涙を必死に抑えて俺は言った。
「苦しい胸の内を打ち明けられたというだけでかなり楽になりました。
その上、美彩さんからそんな言葉までもらえて、俺の中から罪の意識が完全に消え去りました」
遠くに佐伯港の灯が見えた。
「もう着いちゃうじゃない。弱ったな、まだ太陽は出ていない」
「当たり前です。まだ4時前ですよ。夏至だってこんな時間に日の出はしませんよ。
でも、港に着いたときに太陽が出ていないと何かまずいことでもあるんですか?」
「ううん、そうじゃなくて、顔をのぞかせようとするお日様を指さして、『あなたの長い夜が明けました』とかっこよく言いたかったの」
「美彩さん、けっこうポエマーなんですね」
「ひどい、せっかく慰めてあげようと思ったのに!じゃあ、こういうのはどうかしら」
美彩は天頂を指さしながら言った。
「魔法の星座の全ての天使たちが私たちにきっと歌ってくれている」(了)
0218名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/10(日) 23:50:29.75ID:/5usc8Vu0
細かい参照箇所は明日にでも詳しく書きますが、
参照にしたのは清水浩史著「新夜航路」です。
小説ではなく、紀行文です。
0219名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/11(月) 23:15:16.64ID:/7YaRxkT0
深夜航路(後書き)
物語の骨組みをつくる上で参照にしたのは、清水浩史「深夜航路」の「11 宿毛→佐伯」(P215〜P236)の箇所。
この航路を利用したことはないので、港での徒歩客や車が乗り降りする情景はそのままパクった。
また、絵本「幸せのきっぷ」も読んだことはなく、それもこの本からの引用である。
水ノ子島に関する情報や灯台守の思いに馳せるところも引用させてもらった。
0220名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/11(月) 23:17:11.32ID:/7YaRxkT0
橋本欠場の穴を埋めるため、マネージャーから急な出場要請を衛藤がされたという件は、
2019年3月3日のラジオ番組「ジュグラーの波」の中での衛藤の発言より。
0221名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/11(月) 23:20:43.32ID:/7YaRxkT0
最後の一文「魔法の星座の全ての天使たちが私たちにきっと歌ってくれている」は、
英ロックバンドYesの楽曲「Hearts」の中の「All angels of the magic constellation be singing us now.」より。
0222名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/11(月) 23:24:05.88ID:/7YaRxkT0
小学校1年生のとき、同級生と一緒にその父親に連れられて、漁船で深夜の海釣りをしたとき、
CDラジカセでその曲がエンドレスでかかっていた。
その漁船の操縦士の友人がバンドのボーカリストで、そのまた友人の結婚式でその歌を歌う予定だったが、
そのボーカリストが高音の出し過ぎで喉を潰してしまい、
その操縦士に代役が急遽回って来て、その練習をするため、漁船を出すのをいったんは断られた。
同級生の父親が頼み込んで、その楽曲を出航中はかけ続けるのを条件で了承されたという経緯があった。
そのおかげでずっと耳に残った。
0223名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/11(月) 23:27:14.30ID:/7YaRxkT0
もちろん、バンド名も曲名もそのときには知らなかったが、
中学生のとき、遊びに行った都会のCD屋の中で聞いたとき記憶が甦り、店長に尋ねて購入した。
中学生のときには原形のままのbe動詞が使われていることに違和感を覚え、
やっぱロックなんてやる奴なんかクスリかなんかやっていて自国語すらまともにできないんだなという浅はかなことを思った。
高校生のとき、仮定法現在でI desire thatが省略されている文であるということを理解した。
シンプルながらも、英語における文語とも言うべき格調高い文である。
0224名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/11(月) 23:28:31.40ID:/7YaRxkT0
直訳すれば、「魔法の星座の全ての天使たちよ、いま私たちのことを歌っておくれ」ということになるだろうが、
そのまま使うと、二人の結びつきを暗示するということになるので、いくらフィクションだといっても厚かましすぎると思って、ちょっと変えた。
0225名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/11(月) 23:30:14.20ID:/7YaRxkT0
人の間違いを勘ぐる前に自分の能力不足を疑えということを肝に銘じさせてくれた思い出深い曲でもある。
深夜の旅客船を舞台にした物語を妄想しているうちに、小学生のときの深夜での漁船の思い出が甦り、
その一文をどうしても入れたくなった。
0226名無しって、書けない?(広西チワン族自治区)
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2019/03/11(月) 23:48:11.39ID:8z2ftujOK
>>225
イエスのアルバム『90125』(邦題が『ロンリーハート』)の最後を飾る名曲ですね
解説読むまで全く気づかなかったです

かつて自分がそのアルバムの最初を飾るヒット曲『ロンリーハート』を題材にダジャレで一作品書いたのも思い出しました(笑)
0227名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/11(月) 23:54:38.36ID:/7YaRxkT0
ええ、その通りです。
「ロンリーハートOwner of Lonly Heart」はいくつものCMでよく使われていましたね。
子供のころ聞いたときにはよくわからなかったけど、そりゃこんな曲を素人が(特に男が)歌えば喉はやられますよね。
0228名無しって、書けない?(広西チワン族自治区)
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2019/03/11(月) 23:59:28.71ID:8z2ftujOK
>>227
歌ってた本人も喉で闘病してますしね…
0229名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/12(火) 23:07:45.09ID:dwuH7rgc0
喉で闘病していたというのはよく知らないのですが、Yesのボーカリストってたしかヘビースモーカーでしたよね。
ツアー中のときには全く吸わなかったらしいですが。
0230名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/12(火) 23:16:36.73ID:dwuH7rgc0
清水浩史「深夜航路」について

夜0時を回って出航する船旅を著者は「深夜航路」と呼んでいる。
旅客船の深夜便はどんどん少なくなっていて、今や絶滅危惧種である。
経済効率を考えれば致しかたないのかもしれないが、それには文化的な側面もあり、消え去るのはあまりにも惜しすぎると著者は考えている。

棚田のような田園風景は保護されたり、ブルートレインとかは愛惜されたりするのに、
「深夜航路」はその存在すら全く知らない、あるいは、意識したことがないという人が殆どだろう。
そこに目を付けたというだけで出版される意義は大いにある。
0231名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/12(火) 23:21:09.29ID:dwuH7rgc0
都市の隙間を見つけて積極的に参入せよというブラッドリー・L・ギャレットの主張への共感がこの本の執筆の原動力となっているようだ。
長い旅客航路のある港の近くには小さな島への渡し船もあるが、島の人口減少や橋の建設などでそれも廃止される傾向にある。
「深夜航路」以外でも、そういうことも丁寧に汲み上げて、著者の愛惜の念は注がれている。
名文というわけではないが、分かりやすい日本語でストレスなく読める。
あまり売れてはなさそうだが、もっと知られていい本だと思う。
特に、島好きや船好きの人にはお勧め。
0232名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/13(水) 23:25:27.66ID:WwbtMVm00
ラスト・ステップ(その3)
「なあ、わざわざ握手会にまで来て、なぜあんな異常なことするんだ?」
「やっぱりエラ張りデカ鼻離れ目の三重苦の上村ヲタだったのか。あの女が嫌いだから、思ったことを言ったまでだ」
「上村のどこが気に入らない?」
「あいつは差別主義者だ」
「はあ?上村が差別的な言動をしたことを見聞きしたことは一切ないが」
「ナチ服を着て、ユダヤ人差別をしただろ」
「ずいぶん前のことだな。それにナチスもどきの格好をしたというのなら、上村一人だけじゃなくて、欅坂のメンバー全員がそうじゃないか。
なぜ、上村だけを攻撃する?」
「ナチ服のあいつの画像が流出したから代表して責任を取らせてんだ」(続く)
0233名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/14(木) 22:55:01.22ID:bZsmPq8m0
ラスト・ステップ(その4)
「驚いたな。ピント外れもはなはだしい。画像が流出していてもしていなくても全員が同じ服を着ていたから、罪があると本気で思っているなら全員が同罪だ」
「上村には責任がないと言うのか?」
「本気で責任とらせるつもりなら、まず服をつくったデザイナーで、その次がチェックを怠った欅坂運営だろ。
運営から言われるままに何も知らずに服を着たんだから、責任があったとしてもごく軽微なものでしかない」
「いくら上村が馬鹿だといっても、ナチスのことを知らないなんってあり得るか!」
「ナチスがユダヤ人に行った残虐行為は当然知っているだろう。
ただし、あの服がナチ軍服を真似たということは間違いなく知らなかったはず、上村だけでなくメンバー全員が」
「なんでそんなことが断言できるんだ?」
「ナチ軍服がモデルと分かっていたなら着るわけがない。
おそらくナチ軍服を真似た服のアニメの登場人物をかっこいいと思ったデザイナーがさらに真似てあの服をつくった。
そのとき、元ネタがナチ軍服だということにデザイナーは気づいていなかった。
次に、その服を見た欅坂運営も気づかなかった。
デザイナーや運営が気づかなかったのに、年若いメンバーが気づくわけがない」(続く)
0234名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/15(金) 23:31:00.34ID:LbV76vwS0
ラスト・ステップ(その5)
「知らなかったら何でも許されるというわけではない。知らなかったことを反省して、謝罪文をブログで書かないとダメだろうが」
「上村が知らなかったということは認めるわけだな」
「だから、知らなかったら何でも許されるとわけではないと言ってるだろうが」
「お前さんの正義を貫こうとする姿勢はわかった。ユダヤ人の身になって激しい怒りを感じているんだな?
だったら、もっと見逃せないものはいっぱいあるぞ。
たとえば、シェークスピアの『ベニスの商人』では、ユダヤ人のシャイロックが金に汚い悪人として登場する。
それも特殊なユダヤ人としてではなく、ユダヤ人の典型としてだ。
また、ドストエフスキーの『白痴』でも、ロスチャイルドという実在の人物をユダヤ人の代表として登場させ、守銭奴のように書いている。
おまけに『ジュウ』というユダヤ人差別語まで使っている。
今回のナチ軍服モドキは元凶のデザイナーですら意図的なものではなかったが、シェークスピアもドストエフスキーも意図的に悪意を持ってユダヤ人を描いている」 (続く)
0235名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/16(土) 23:39:46.48ID:ReHmYW6V0
ラスト・ステップ(その6)
「そんなことは知らん」
「知らずにいて、今まで抗議して来なかったというのなら、その無知は許そう。
だから、お前さんも上村が無知であったことを許してやれ」
「ふざけんな、差別主義者を許せるわけがないだろうが」
「じゃあ、もう一度繰り返す。シェークスピアもドストエフスキーも意図的な差別主義者で、その上、影響はかなり大きい。
小さな悪よりも巨悪に対してレジスタンスを行うのが筋だ。
とりあえず、『ベニスの商人』や『白痴』を文庫で出版している新潮社や岩波書店に反省を促せ。
両社が反省文をネットに上げて、それらの文庫を発禁するまで抗議しろ。
その後に、デザイナーと欅坂運営に文句を言え。
上村に反省を求めるのはさらにその後だ」
「馬鹿か、そんな世界的に認められた文学作品と軽薄なアイドルとを一緒にすんな」
「立派なものだから差別は許され、劣ったものなら差別は許されないと主張したいのか?
だったら、それこそ最も醜悪な差別じゃないか」(続く)
0236名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/17(日) 23:00:57.68ID:O011/Npu0
ラスト・ステップ(その7)
「醜悪なのは上村だろうが、どれだけ多くの人が上村を嫌っていてと思ってんだ!5ちゃんねるでいつもディスられている」
俺はあきれて嗤ってしまった。
「何が、おかしいんだ!」
「なあ、子供のころ、透明人間になれたら、どんなイタズラでもできるとか思ったことはないか?
あるいは今でも女湯を覗けることができるのにと思ったことはないか?」
「はあ?なに関係ないこと言ってんだ」
「匿名掲示板も同じようなもんだということだ。
自分の正体を知られることなく発言機会を得ているというのは誰もが透明人間となれることに等しい。
責任を取らされることはないから、全く筋道の通らないことでも平気で書いてしまう。
もっとも、道理の通らない上に罪もない人を中傷する卑怯な人間というのはごくわずかだ。
その少数者がキチガイじみた書き込みを繰り返しているから、大勢いるように見えるだけだ。
上村のディスりでも同じこと。書いているのはおそらく一人か二人」(続く)
0237名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/18(月) 23:54:46.13ID:DYa4Wgvz0
ラスト・ステップ(その8)
「なんだ、さっきから揚げ足取りばかりして」と奴は情けない口調でぼそっと言った。
「揚げ足取り?そんなことなど一切していない。むしろ、ころころ変わるお前さんの主張の核心部分に逐一付き合ってやっている。
今までの自分の発言とそれに対する俺の対応を顧みろ。
ナチ軍服であることを上村が知っていたから許せないというのが最初の主張だったよな。
そこで、上村が知っていたわけがないと言いきかせたら、知らなかったから許されるというものではないという主張に変わった。
それにも付き合って、イノセントで影響のないアイドルよりは意図的で大きな影響を持つ大文豪のほうを問題にしろと諭した。
そしたら、偉人なら差別は許されるが、軽薄なアイドルは差別は許されないと言い出す始末。
そういう考え方こそ醜悪だと教え授けたら、醜悪なのは上村だとまた論点をすり替える。
しかも、上村が醜悪であるという根拠が5ちゃんねるの書き込みによるものだと言いだす。
それは愚にもつかないことであると馬鹿でもわかるように説明した。
これだけ何度も撃滅されたら、普通は自分の非を認めるものだが、お前さんには羞恥心というものがないのか?」
0238名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/19(火) 23:30:36.00ID:Bgu5leFi0
ラスト・ステップ(その9)
わなわなと体を震わせ、奴は黙り込んでしまった。
「まあ、いい、話題を変えるか。お前さんが上村を嫌っているのはよくわかった。でも、その理由がどうしてもわからない。
上村がユダヤ差別をしているというのは口実に過ぎないんだろ。
なぜ、握手会にまでわざわざ来てイチャモンをつける」
「他のメンバーをテレビでは見ているとき、あいつのブサイクな顔が邪魔。一般人のレベルでブサイク。だから欅を早く辞めてほしい」
「他人の美的主観にいちいち立ち入ろうとは思わんが、少なくとも俺はあのビジュアルに惹かれている」
「はあ?あんなエラ張りデカ鼻離れ目の三重苦をか?」
「エラは張っていないし、鼻は綺麗な形をしていて、むしろこじんまりしている」
「なるほど、なるほど、重度の上村ヲタから見れば、そう見えるのか。
だが、そういう重度ヲタでも離れ目というのは否定できないみたいだな」と勝利宣言するかのような高笑いを奴はした。
「哲学者ベーコンは言っている。
『その均衡に何らかの奇異を持たぬかぎり、絶妙の美とはなりえない』と。
まっ、簡単に言えば、塩をふったスイカはその甘さが引き立つというのと同じようなもんだ。
他のパーツは美しく調和していて、あの奇異な離れ目がますます上村の顔を魅力的なものとしている」(続く)
0239名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/20(水) 23:17:21.62ID:EZ+c5/tb0
ラスト・ステップ(その10)
また、奴は黙り込んでしまった。
だが、さっきとは違い、神妙な面持ちで考え込んでいる。
そして静かに口を開いた。
「なあ、もしアンタが金もない、女もいない、仕事も劣悪な条件のものにしか就けていないとする。
そういった状況でも、上村がいれば、それだけ人生はやっていけるか?」
「そりゃまあ、何がなくても、上村と一緒になれるなら、幸福になれる自信はあるな」
「なに厚かましいこと言ってんだ!上村ほどの女がアンタ程度の男と一緒になるわけないだろ!
『上村がいれば』と言ったのは、ファンとしての立場で上村のことを思っていればってこと言ってんだ!」
「ん?上村ほどの女?なんだ?上村に価値があるような言い回しだな」
「うるさい、揚げ足どりしないで、こちらの質問に答えろよ!」
「そんな悲惨な状況ならば、ファンとしての立場で上村を思うだけでは、幸福にはなれないかもしれないな」
「幸福にはなれないかもしれない?あっはっはっはっは、重度の上村ヲタでもその程度か」(続く)
0240名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/21(木) 23:44:29.70ID:TQLhJON30
ラスト・ステップ(その11)
「なるほど、お前さんが上村を嫌っている理由を俺がわからなかったのも無理はないな。嫌っているどころか、実はその逆なんだな。
上村のことを思うだけで、もしかすれば人生はハッピーになるかもしれないという希望すら持っているわけか。
それも、一緒になろうなんて夢物語のような厚かましいものではなく、ファンとしての立場でとわきまえて・・・・」
「ふざけんなよ、あんなブス、好きじゃないぞ」と血相を変えて奴は大声を張り上げた。
「図星を突かれたとき、人は本心を隠すために怒鳴るものだなあ」
「ざーけたこと言われたら、怒鳴るのは当たり前だろうが」
「じゃあ、訊く。お前さんが上村を嫌う理由は何なんだ?」
「・・・・・」
「どうしたんだ?なぜ話せない?」
「自分自身にもよくわからん。わかっているのは俺自身が上村を嫌いだということだけだ。
上村のような女だけは絶対に好きになるまいと決めている」
「『好きになるまい』という努力でもしているのか?」と挑発した。
「ああ、そうだ。上村が悪さをしないようにメッセは取って言動を監視している。
上村のブサイクな顔を嘲笑するため、FLASHの増刊号も買った。
写真では飽き足らず、あのブサイクな顔を生で見るため、今日も電車で3時間もかけて握手会に来た」(続く)
0241名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/22(金) 23:43:24.27ID:C1ApypOb0
ラスト・ステップ(その12)
奴を殴ってやろうという気持ちはすでに失せていた。
「いや、驚いた。お前さんのことが少し好きになったかもしれないな」
「なにキショいこと言ってんだ。俺が本当は上村推しだって思ってるんじゃないんだろうな」
「いや、上村アンチだと主張するお前さんの主体性は尊重しているぞ」と語りかけながら、俺は顔が綻んだ。
「じゃあ、俺のようなアンチでも上村に金を落とせば認めてくれるというのか?」
「それどころか無銭アンチですら、上村に全く興味を持っていない連中よりは上村推しに近いとも言える」
「本気でそんなこと思ってるのか?」
少し間をおいて、俺はゆっくりと暗唱した。
「われ汝の行為を知る。汝は冷かにもあらず、熱きにもあらず。
われはむしろ汝が冷かならんか熱かならんかを願う。
かく熱きにもあらず、冷かにもあらず、ただ微温(なまぬる)きがゆえにわれ汝をわが口より吐き出さん」
「なんじゃ?そりゃ」(続く)
0242名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/23(土) 22:33:29.26ID:P3qaqHk50
ラスト・ステップ(その13)
「新約聖書のヨハネ黙示録の中の一節だ。
『冷か』は憎悪、『熱き』は愛情、『微温き』は無関心、『口より吐き出さん』は拒絶すると受け止めておけばいい」
そう言って、再度そのフレーズを暗唱した。
「つまり、憎しみは愛と近いところにあり、無関心こそが愛から最も遠いところにある。そういう意味か?」
「まあ、だいたいそんなところだ。徹底した憎しみは完全な愛へと至る。
両者の違いは階段の最後の一段を踏み越えるかどうかにある」
奴はまた黙り込んでしまって、しばし時間が過ぎた。
右手でずっと何かを握りしめていたことに気づいた。
ループするため受付に渡さなかった握手券だった。
手を緩めたら、強風でひらひらと上空へ舞い、それにつられ奴は見上げた。
その手で奴の手を引っ張って、コンクリート段の上まで引き上げた。
「海岸線沿いに歩けば、赤レンガ倉庫があり、その中には飲食店がある。よかったらちょっと飲んでいかないか?」と誘った。
「ああ、付き合ってやる。目離れ一重苦の上村の悪口を俺の中に残らないようにとことんまで今日は吐き出してやる」(了)
0243名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/24(日) 23:38:20.64ID:80kHtedP0
ラスト・ステップ(後書き)
参照したのは次の二つ。
・エドガー・アラン・ポーの「リジイア」
「『その均衡に何らかの奇異を持たぬかぎり、絶妙の美とはなりえない』とベーコンが言っている」という引用部分をパクった。

・ドストエフスキー「悪霊」の中の「スターブローギンの告白」
「神への無関心よりは悪魔を信仰するほうがまだよい」と「完全な無神論は完全な信仰に至る最後の階段に立っている」の箇所を改変して用いた。
(間際らしいが、無神論というのはこの世界から神を排除とするという考えで、神への無関心とは全く異なる。)
また、「『われ汝の行為を知る。〜』と『ヨハネ黙示録』にある」という引用部分をパクった。

重厚なドストエフスキー「悪霊」をドルヲタの心理の解明のために援用するという暴挙をやって、変なものが出来上がってしまった。
まあ、それはそれでよしとしよう。
0244名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/24(日) 23:40:38.74ID:80kHtedP0
ユダヤ人差別で明示して引用した箇所は、ドストエフスキー「白痴」では新潮文庫の下巻でP269-270のあたり。
シェークスピア「ベニスの商人」は短いし、誰もが印象に残るところなので、特にページを指し示す必要はないだろう。
0245名無しって、書けない?(北海道)
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2019/03/25(月) 17:01:12.73ID:K5BAXeTA0
あげ
0246名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/25(月) 23:03:08.73ID:zm5F4sOt0
こんなスレをわざわざあげてもらって、ありがとう!
もしかしたら、以前、上村莉菜応援スレに常駐していた北海道さんかな?
0247名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/26(火) 23:45:22.55ID:69mp97tG0
ドストエフスキー「悪霊」について
社会派ジャーナリズムのノンフィクションは好んで読むけど、社会派の小説というのには面白いものに出会ったためしがない。
読んだ限りでは、上っ面の図式に終始しているだけのものにしか出会えなかった。
ドストエフスキーの作品の題材のほとんどは三面記事で、その当時の社会派小説と言われている。
たしかに、内ゲバにかけたとかの単なるスキャンダルな話であると「悪霊」も言えなくもない。
ただし、人間の本性を容赦なく暴き立て、その内面の奥深いところまで追求するので圧倒される。
読んだのは大学一年のときで、あまり理解できていなかったと思うが、最も大きな影響を受けた本の一つであると明言できる。
0248名無しって、書けない?(東京都)
垢版 |
2019/03/26(火) 23:53:36.74ID:69mp97tG0
また、登場人物がやたらと多いという印象が強い。
長編だから当たり前じゃないかと言われそうだが、スタンダールやトルストイの長編と比べても、数倍は多いような印象が残る。
実際にはそんな差はないはずである。
主人公以外でも作中人物の一人ひとりが鮮明に浮かび上がることにその原因があるような気がする。
精神科医の斎藤環はテレビで次のようなことを言っていたが、首肯できる意見である。
>ポリフォニー(多音性)とはもともとは音楽用語でいろんな旋律が同時進行してハーモニーをつくるというものである。
>ロシアの評論家ミハイル・ベラチンがドストエフスキーの小説がなぜ特別なのかを解明するときに用いた。
>他の小説家、たとえばトルストイが書くものはいっぱい人は出てくるが、作家の独り言を登場人物に振り分けているだけ。
>ドストエフスキーの小説は登場人物すべてが個性を持っていて、いろんな角度からしゃべってくるので、ポリフォニーとなる。
0249名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/27(水) 22:52:06.11ID:57qcQwc10
日向坂のシングルデビュー日に合わせて書こうと思っていたが、何も思いつかない。
なので、保守だけしておく。
0251名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/29(金) 23:01:33.74ID:uej7i9VB0NIKU
昨日と今日とで日向坂のデビューシングルの全タイプのPVを観終えた。
これから駆け上がっていく希望と先の見えない不安とが表裏一体をなす形で吐露されていて、見ごたえがあった。
どのメンバーのものでも捨てPVは一つもなし。

ネタ探しにもならないかと思っていたのだが、細かい材料となりそうなものはいくつもあったが、
大きなモチーフとなりそうなものは見つからなく、今日のところは物語の発想を得ることはできなかった。
0252名無しって、書けない?(東京都)
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2019/03/30(土) 23:28:55.39ID:P9eQJKrc0
今日、書くつもりだったが、急用が入った。
全くつまらないものとなってしまっても、明日は無理にでも仕上げる予定。
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