新生活初日に容易く眠れる図太さはない。
真っ白の壁と月光の差し込むテラスを視線でいったり来たりする。
とろんとしはじめた時、レースのカーテンがヒラヒラと揺れた。
目を何度か瞬かせる。
青い布の裾と生白い脚が見える。
そして一言暖かな風に載って低くぼそっと、そして、興味津々という風情で。
「あ、新しい人だ。」
「あんた誰?」
驚きすぎると返って冷静になるらしい。
「えっ、ここの元住人。」
己を指さすその指先は酷く細白い。
黒髪は襟まで。ノースリーブの青いワンピース。艶やかな肌。白い唇。尖った眼差し。
「はっ?」
ベットサイドに起き上がってこの女性をじっと見る。
「だから誰よ。」
立て続けに僕は訊ねる。
「ここの元住人で平手友梨奈。年齢・・・あー、間違えた。」
頭に手を当て、少し恥ずかしそうに笑う。
「年齢はいくつって言えばいいんだ?」
僕の顔を見つめて呟く。
「僕に訊くなよ。」